雨の降る部屋

雨世界

1 こんにちは。今日もいい天気ですね。

 雨の降る部屋


 プロローグ


 明日は、晴れるかな?


 本編


 こんにちは。今日もいい天気ですね。


 私の暮らしている部屋では、いつも雨が降っていた。私は雨の中でずっと暮らしていた。

 部屋の外に出ているときは、こんな風にずっと雨に濡れることはなかった。(もちろん、家の外でも雨は降るときはあったのだけど、いつも雨が降っているわけではなかったから)


 私は部屋の中にいるときは、いつもいつも、泣いていた。


 私は家の外にいるときだけ、ずっと、ずっと、にっこりとした笑顔で笑っていた。(もちろん、それは偽物の笑顔だった。本物の太陽ではなかった)


 それから家に帰ってきて、部屋のドアを開けると、私の部屋にはやっぱりいつものように雨が降っていた。この雨をどうしても止ませたいと思ったのだけど(雨は嫌いではないのだけど、ずっと雨だと気が滅入ってしまうのだ)私には、この雨がどうすれば止むのか、その方法が全然わからなかった。


「紺」

「なに、お母さん」小さな声で紺は返事をする。

「暇だったらさ、ちょっと買い物行ってきて。急に用事ができちゃったの」忙しそうにしている様子のお母さんが言う。


「うん。わかった」開いていないドア越しに、紺はお母さんにそう言った。


 中学校の制服からシンプルな私服姿(白い薄手のセーターに、青色のスカートだった)に着替えをした紺は、お気に入りのサンダルをはいて、お母さんの代わりに夕食の買い物に出かけた。


 家を出ると、世界の全部が、オレンジ色の夕焼けに染まっていた。


「……綺麗だな」そんな(本当に、馬鹿みたいに見れな)夕焼けを見て、大きめの買い物用の手提げバックを持った紺は一人、そんなことを玄関の前でつぶやいた。

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