第2話 障害者雇用
季節は夏、ペースメーカーを入れたことで障害者手帳を申請する事にした。
市内のバス料金半額、タクシーはケアタクシーで2割安くなる、JRは基本運賃半額。
移動の面で優遇措置があるのはありがたい。
その他にも障害者の生活、就労支援施設の利用など手帳はないよりはあったほうが良いと思うのだが、手帳を持つ=国に障害者として認められた、という事実があり、これを嫌って障害者手帳を持たない人も少なからずいるらしい。
平成25年に障害者差別解消法、という法律が出来た。
簡単に言うと、障害のあるなしで格差があってはならない、文字通り障害を理由とする差別の解消をなくしていくための法律だ。
この法律の肝となるのが合理的配慮。
合理的配慮とは何か?というのが実はこの法律の難しいところで、障害者が権利利益を侵害しないように、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要で合理的な取り組みで、その取り組みは地域差はもちろん、合理的配慮がきちんとなされているところ、ある程度なされているところ、全くなされていないところに分かれる。
俺の職場はどうかというと、まあ、なされていると言ったところだろうか。
心臓病という病気に対して配慮というと、たまに起きる激しい動悸があれば、休憩を取りなさい。
体調が悪いときは、いつでも言いなさい。
というもの。
例えば車椅子の人のように、廊下に物を置かないとか、道幅を広くするとか、目に見える形での配慮ではないが、職場の上司だったりがたまに苦しくなる現象を知ってくれているというのは、実は大きな事だ。
これが知らない場合だと、動悸の事も言えないからひたすら我慢するしかない。
ひどい場合は体調不良と濁して早退して病院に行くと思うが。
障害者の働き方として、大きく2つあるのだが、1つは俺のように初めから病状を伝えて働く働き方。
先ほど書いたように、知ってもらえているだけで、体調不良になった場合はもちろん、普段でも安心して働けるというメリットがある。
一方、障害者であることを隠して働く働き方。
これはかなり厳しい。
なんせ、健常者として雇われるのだから、普段飲んでいる薬も隠れて飲んだり、体調不良になっても簡単には休めない。
月1の通院すらハッキリ言えないから、通院とは言わずに、用事があるという様な言い方しか出来なくなる。
会社に障害者としてきちんと話してから働くことを、オープン。
黙って働くことをクローズという。
黙っているというよりは、隠すというほうがあっているかも知れない。
しかし、昔と比べて会社側にも、従業員を45.5人以上雇用している企業は、障害者を1人以上雇用しなければならないという法律が出来たので、障害者がいきなり落とされることは昔よりは減ったのではないかと、個人的には思う。
俺もいち障害者として就職したわけだから。
ただ、雇用される数としてはまだまだ少ないし、障害者一人で就職活動することは、かなり困難な事である。
ハローワークで障害者窓口に行って、自分1人で障害の程度や何が出来て何が出来ないなど担当に説明して、じゃあどういう仕事が向いているのか、希望の職種は?
などと、説明しなければならないからだ。
では、一人で就職活動する以外の方法はというと、障害者雇用をサポートしてくれる場所というのがいくつかあって、そこに登録して障害者に詳しい専門家と話し合い、仕事の適性検査などもして、二人一組で仕事を探すというもの。
俺はこのやり方で、今の職場で働ける事になったわけである。
40過ぎの恋心 いつか @Aquarius22
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