私は誰ですか

@kitruna

第1話 目標を失った理由

 かつて私は教師を目指していた。今となっては、なぜなりたかったのかも忘れてしまったけれど、確かに教師になりたかった。教師を目指すうえでの勉強は苦痛ではなかった。障がい者教育や学校現場の改善に関する授業、学校授業の作り方、HRの運営方針、いじめ問題など、学校現場には問題が多くあり、それを改善することを考えるのは、楽しかった。しかし、そういう勉強を続けるにつれ、私は、教師になろうという意欲が失せて行ってしまった。学校現場の現状があまりに厳しいからだろうか、保護者対応や、クレーム処理、いじめ問題に、部活など、時間外労働、そういった事柄が、私を教師から逃げさせてしまったのだろうか。これらも理由の一つだが、もっと大きな理由があった。

 私が教師という職業から逃げた一番の理由は、自分が人の欠点ばかりを見つけてしまう人間だと気が付いてしまったからだ。学生時代、家庭教師の仕事をしていた時、私は保護者受けがよく、子供受けがよくない先生だった。勉強のやり方や、宿題の確認など、学力の向上に必要なことは全力を尽くしたし、わからないところは丁寧に教えた。私の受けてきた教育というものはそういうもので、間違えた問題を繰り返すのが私にとっての教育だった、生徒の悪い癖、集中していないとことを直しはすれど、できた問題は、薄っぺらくほめるにとどまるし、プラスの評価をすることはごくごく少なかった。私にとって教育とは叱ることであると気が付いたとき、私は愕然とし、絶望した。こんな教育を行うわけにはいかないと。こういう理由で私は、教師の道から逃げたのだ。

 教師にもなってない私が偉そうに語ったところで何の説得力があるというわけでもないが、これは教師だけに限った話ではない。あなたは、人に教えるとき、何を考えていますか、目標の一つを私は失ったわけだけれども、一つの気づきを得た。あなたにとって、教育とは、何でしょう。

 今の私は教育を目指し、勉強していた意欲溢れる青年ではなくなってしまった。私はどんな人間なのだろうか、あなたはどんな人間ですか。夢はありますか、政治に興味はありますか、宗教を信仰していますか、趣味はありますか。あなたという人物をさせているのは何でしょうか、かつての私は、教育になって、未来を変える人物だと考えていました。今は、娯楽を楽しむだけの人間になってしまいました。

 

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