彼方の君へ届けたい。

天花寺紅葉

第一章 始まりは陽射しを浴びた葵が咲く頃に。

――皐月 真司くん、起きて!


そう言ったのは担任の瀬川 紗香先生。清楚な美人でフレンドリーであることから生徒からは圧倒的な人気を博しているのだが……


 「あぁ。すみません。」 


真司がそう言うと先生は頬を膨らませ、教卓へ戻る。正直、好きではない。かと言って別に嫌いなわけでもないが。




 「やっと終わった……三年になっても数学やらないといけないのかよ。」」


そう伸びをしながら独り言を呟くとーー


 「真司は相変わらずだね。なんだか安心するよ。」


 「なんだよそれ」


声を掛けたのは花田 翔平だ。唯一の中学からの同級生。


 「なぁ、翔平は進路どうすんだ?」

 

 「推薦だよ。真司と同じ菖蒲学院大学」


 「翔平もっといい大学行けそうなのにもったいないな」    

 

 「いいんだよこれで。大学で決まるわけじゃないと思うよ。」


 ――思えばもう三年生。周りは受験特有の空気感が流れているが、俺はそんな危機感や緊張感など微塵も抱くことはなかった。


 「そういえば帰ったら作文の内容考えないとな……」


 ――ふと外を見るとそこには太陽に向かって元気に咲く葵があった。

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彼方の君へ届けたい。 天花寺紅葉 @Tengeizi

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