第17話

「!!?」


ーぎゃああああ!ー


ーうそやあぁ!!ー


ーさ、さらっやー


ーほぉ、やりますの、姫よー


(っうそおおぉ!!)


全俺と、その愉快な仲間が絶叫した。


だって。

だってさ。


「っん!っふ」


俺、キスされてたんだよ!?

しかもディープでっ!


(ナニコレナニコレ何ですかー!?)


混乱する頭の隅で、妙に冷静に考えてしまったのは、我が身に起こったショッキングスキャンダルのこと。


(今誰かがここに入ってきたら、俺変態だと思われちゃわない?)


いや、むしろこれ、


(誰か来た方がいいだろ!?)


のはわかるけど


「んっ、んんっ!!」


その前に酸素ぷりーず!

言葉すらまともに発せないんですが!?


ーさぁら、呼べ!ー


ーさらちゃん!!ー


(呼べたら呼んでるよ!)


憑神を呼ぶためのキーワードは、声。


その声が出ないとか、ひょっとしてひょっとしてっ!

(ジーザズ!)


涙目の俺、長い長いキスに絶体絶命を予感中。

今まで、数々のスリルは味わったけど。

いまだかつて、こんなデンジャーなシチュエーションはなかったぜ。


(っつか、俺、ファーストキスじゃないのこれ!?)


某ファミレス(しかもトイレ)にて、名も知らぬヤンキー(たぶん憑神様)に唇を奪われた、茫然自失中の俺、久世新埜。


ピンチと哀しみの果てに、終わらぬ受難を予感した十八歳の、秋である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ノアの憂鬱 旋利 @gcrow5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ