スクロゥ到着


 スクロゥの街の中に入ってみると、そこはエミルとはまた違って木造建築の建物がほとんどで、しみじみとした風情を感じることのできる趣のある雰囲気の街並みだった。


「おぉ、ここはなんていうか……趣のある街だなぁ。」


 それにどこかから香ってくるこの香りは……。くんくんと鼻を鳴らしていると、シアが目をぱっちりと開いて、興奮した様子で言った。


「お魚さんを焼いた匂いがする!!すっごく美味しそうな匂いぃ~。」


「あぁ、しかもこれは炭火で焼いてるな。」


 炭火で焼いた魚なんて美味しくないわけがない。今日のお昼ご飯はもうこれに決定だな。


「シアはお魚食べたいか?」


「うん!!」


「じゃあみんな、今日のお昼ご飯は魚にしようと思うんだけど、どうかな?」


「「「さんせ~い!!」」」


 みんなの同意が得られたところで、シアが匂いのもとをたどって、とあるお店まで俺たちのことを誘ってくれた。


「おっ、焼いてる焼いてる。」


 そのお店の前に着くと、外から中の様子が見えて、大きな囲炉裏のようなところに炭を置き、そこで串に刺された魚がたくさん焼かれていた。


「お魚さんだっ!!」


「よし、じゃあ入ってみようか。」


 そのお店の中に入ると、すぐに1人の店員が駆け寄ってきた。


「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」


「えっと、イリスもいるから……11人。」


 グレイスを合わせたら12人になるんだけど……今はちっちゃくなってるし、スペースは取らないから問題ないだろう。


「それでしたら広いお座敷のほうが良いですね。こちらへどうぞ~。」


 お店の奥にある宴会に使われるような広い座敷の間へと俺達は通された。そして全員分の水が湯呑みに入って運ばれてくる。


「当店でお出しできるお品物はこちらに書いてありますので、注文がお決まりでしたらお声がけください。」


「多分たくさん注文すると思うんですけど大丈夫ですかね?」


「全然大丈夫ですよ。丹精込めて焼かせていただきますので!!」


「じゃあ、注文が決まったらまた呼びます。」


「は~いそれではごゆっくりどうぞ~。」


 店員が座敷の襖を閉じて去って行ったあと、俺たちは早速お品書きに目を通していくことにした。


「さて何にしようかな。」


「シアお魚っ!!」


「お魚でもいろんな種類があるぞ?」


「どれでもいいの?」


「あぁ、どれでもいい。みんな好きなものを選んでくれ。」


「えへへ~じゃあどうしよっかな~どうしよっかな~。」


 時間をかけて各々好きな炭火焼の料理を選び、大量の注文を店員さんに伝えると、流石にこんなに大量に頼まれるとは思っていなかったらしく、本当に驚いていた。


 このお店の提供方式は、一品ずつ焼き上がったものを運んできてくれる形式らしく、俺たちは最初から最後まで焼きたての美味しい魚や肉に舌鼓を打ったのだった。

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転生料理人の異世界探求記 しゃむしぇる @shamsheru

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