風流


 スクロゥという街の近くで馬車を止めて、ここからは徒歩で街を目指すことにした。馬車から降りた途端、ランとレイの2人はぶるっと体を震わせた。


「だ、だいぶ寒くなったわね……。」


「主、この前買ったモコモコの服が欲しいのじゃ。」


「ワタシも欲しい。」


「ちょっと待ってな。」


 この前買ってきた2人の冬服をマジックバッグの中から取り出して手渡した。すると、すぐに2人はそれを自分が今着ている服の上から羽織って、ほぅ……と一つ大きく息を吐き出した。


「温いのじゃ~。服というものに感謝する日が来るとは……まったくわからんものじゃの。」


「ね、いっつもこのぐらい寒くなったらせっせと冬眠の支度をしてる最中だもの。」


「やっぱり2人も冬眠していたんだな。」


「そうよ、寒期に動き回るなんてことは全くしてなかったわ。」


「そもそも寒すぎて動けなくなるのじゃ。故に寝るしかやることがなかったというべきかの。」


「そうやって着込めば大丈夫そうか?」


「うん、あったかいし、問題なさそう。」


 服を着こんで暖かくすれば冬眠の心配はない……と。またこれでドラゴンに対する知識が増えたな。


「一応ツンドライサが寒すぎた場合にも対処できるように、ここでまた防寒対策をしっかり見直してから、この先に進もうと思うんだ。」


「そうね、そのほうが良いかも。」


「あとはちょっとした昼食とか食べて、観光して……また進むって感じかな。」


「わかったわ。」


 そしてゆっくりとスクロゥへの道を歩いていると、師匠が周りの景色を見渡しながらぽつりと言った。


「この紅葉に染まった山々の景色に、目の前を流れる美しい川……うむ、風流だな。」


「「「?」」」


 師匠の言葉にみんなが首を傾げた。


「あぁ、なんと説明すればいいんだろうな……その、古から変わらない美しい景色……と言えばいいか?」


 説明に困りながら、師匠がこちらに視線を送ってくる。


「雰囲気が落ち着いてて、綺麗な景色って説明すればわかりやすいんじゃないですか?」


「そうだな。つまりはそういう事だ。」


 そんな風流を感じれる景色を眺めながら歩いている最中、師匠はそれっぽく次々と俳句を詠んでいくが、そのどれもが字余りや字足らずで、良い評価の出来るものではなかったのだが……。周りで聞いていた他の面々は、おぉ~っと感嘆の声をあげていた。

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