第3話 平凡女子高生は家に帰れない

「帰る方法がない!!?」


有紗アリサは天に向かって思いっきり大きな声で叫んだ。

「ンだよ、ウルセーな」

「あはは、表情がよく変わる子だなあ」

しかめっ面のスピーサと反対に爽やかな笑顔のアーサー。対照的な2人の性格が出る。


「ス、スピーサ様!この辺にスマホ落ちてませんでした!?」

「は?“すまほ”ってなんだ」

そっか、この世界にはスマートフォンなんてないのか、と有紗はここは日本ではないと再確認する。


「えっと、あの移動電話のことです、持ち運び出来るんです。あとカバン!」

「その移動電話もカバンも知らねーな。テメェしか子豚みてーに転がってなかったぞ」


子豚みてーに転がるって…。さすが、読者投票『口が悪いキャラランキング1位』『デリカシーなさそうなキャラランキング1位』のスピーサだと有紗は感じた。この世界は読者の感覚に沿っている。よっ、デリカシー無し王子。


たしかに、ここは町外れの草原のようだけど私達3人しかいない。何も落ちてないし、誰の気配もない。

でも、私はスマホからこの世界に来たんだし、スマホになんらかの解決策があるはずなのに…どうしよう、ここからどうしたらいいのか分からない 。この世界に来れたのは嬉しいけど、帰れなくなるのも困る…


困惑する有紗にアーサーが優しく声をかける。

「僕も来る途中なにも見なかったよ。ところで君はなんて名前なの?」


「あ、有紗です…」

「アリサ、か。変わった名前だね、服も僕らとは違うし」

「ちょっと遠くの国の者でして…どういうことかこの国で倒れていました、帰り方も分からなく…」


有紗はたどたどしく答えた。アーサーは有紗の前へしゃがんだ。

「ここは陽の国でも、雷鳴の国でもないんだ。今は国同士の条約で迷子は見つかった国で保護することになっているんだ。だから、アリサ、君に会わせたい人がいる。僕らのお姫様さ」


「お姫様…まさかエリザベスちゃん!?会いたい!」

「エリに失礼だぞ、ちんちくりん」

スピーサは呆れたように言う。

「は!?ちんちくりん!?」

「テメェなんかちんちくりんで十分だ。オレ様はまだテメェを信じてねーからな。テメェはスパイだ!」

「なっ!ひどい!いじわる!」

「なんだオレ様にその態度は!オレ様は雷鳴の国…「まだ王子じゃない!年もそんなに変わらないわ」

アリサとスピーサが言い合いを始めそうになったのでアーサーが2人を制する。


「まあまあ、彼女をどうするかはこの国が決めることだからね、逃げずに付いて来てね、アリサ」

アーサーはニッコリ微笑んだ。


あれ…もしかしてうまく誘導されてる?


有紗、もといアリサは少し疑念を抱きつつ、エリザベスの住む城へ向かった。




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嫌われ女子高生は下克上したい 橘 汀 @tachibana_migiwa

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