第3話  報酬

このタイミングからって結局何も変わらないな。

一度見た光景にそう慌てることもなく振り下ろされる大きな腕を見る。

「何だ、結局また死ぬだけか。あのサクヤとかいう女意味ない事しやがって」

そう思いながらこの後聞こえるグシャって音を待っていた。


「グァアアアアアアアア」


予想に反して聞こえてきたのはあの異形の痛々しい叫び声だった。


見ると異形の腕が捥げている。

何が起こったんだ?誰かが俺を助けたのか?

辺りを軽く見まわすが俺を助けたであろう人物は居らず、涙目で腰を抜かし座り込んでいる子供が居ただけだ。

その時ふと視界が暗転した。


「あ、そうそう言い忘れたけど協力者へのお礼って事であなたにはこの魔物達に対抗出来る力を与えておいたわ。感謝なさい。世界であなただけよ?オンリーワンよ?」

つい先ほどまで聞いていたあの声とドヤ顔。

間違いないサクヤだ。


「おい、誰もそんな事望んでないし俺は生き返りなんてーー」

「お黙りなさい、それともうすでにあなたは力を得て生き返ってるの。今更元になんて戻せないから」


こちらの話を聞くどころかかぶせ気味に遮ったサクヤは続ける


「いいかしら?あなたは人間、あたしは神。わかる?人間が神の意向に背くなんて許されないの。さっきも一応選択肢与えてあげたら断ろうとするんだもの。驚きだわ。」


人の話を一切受け付けないうえ、まるでこちらが悪いかの様に睨みつけながら話している。


「・・・はぁー、分かったとりあえず協力はする。ただいくつか聞きたいことがある」

「よろしい。でも質問は後にしてさっさとさっきの魔物倒しちゃいなさい!」


こいつ本当に勝手だな。

文句を言おうとした時には視界は元に戻りサクヤの言う魔物が捥げた腕を押さえながらこちらを睨んでいた。


殴りかかったはずの魔物の腕が捥げた、恐らくだが状況から俺の身体は物凄い強度になっているのであろう。

確信はないがダメージを受けないのであれば、、、。


俺は効くか効かないかは分からないまま魔物に向かい思い切り殴りかかってみた。


ーーーーパスン


乾いた音と共に跡形もなく消え去る魔物。


「、、、、、、、えっ?」


座り込んでいた子供と目が合い互いに数秒の沈黙の後先に口を開いたのは子供の方だった。


「にいちゃんすげーーーーっ!」


まるで憧れていた戦隊物のヒーローに会ったかのように瞳を輝かせ興奮した表情で子供が叫ぶ。

そのままこちらに近づこうとする子供を制止し脅すような声で言う。


「おい、今見たこと誰にも言うなよ?言ったらお前もあぁなると思え。分かったな?」


興奮の表情が一転恐怖に慄いている。

だがこれでいい。

俺は誰かを助けて感謝されるとかそういうのには向いていない。

萎縮し動けない状態の子供を置き去りにしてとりあえずサクヤと話そうと名前を呼んでみた。


「サクヤ、聞こえるか?魔物は倒した。さっきの話の続きがしたい」


また視界が暗転しサクヤが現れた。


「はいはい、聞こえてるわよ。あとサクヤ様って呼びなさいよ」


「サクヤ、質問だ。さっきのアレを魔物と言っていたが俺たちの認識する物語やゲームに出てくる魔物と一緒って事か?」


「サクヤ様ね?そうね、そう捉えてもらって間違いないわ」


「そうか、それから俺に力を与えたとか言っていたがこれはどういうものなんだ?」


「それに関しては簡単よ!ただ単純にあなたの事をメチャクチャ強くしただけ。しかもあたし達神の力を使ってるから元々あなたが持っている筋肉量はそのままに見た目も変わりなく!すごいでしょ?」


「分かった、何か魔法みたいなものが使えるとかはないのか?」


「魔法ねーそればっかりはその人のセンスが大きく関わるのと人間に魔法使えるようにするのかなり面倒だから今回は無しね」


「そうなのか、分かった。でだ、今起きている状況はどうすれば収まるんだ?」


「んー分からないわ。そもそも人間界と魔界がリンクするなんて初めてのことだし、魔物全部倒すかそう仕向けた本人を倒すかしたら収まるんじゃないの?あなたはどうおもう?」


こっちの疑問を疑問で返してきやがった。


「俺に分かる訳ないだろう。お前の方で調べてくれ。それと最後に質問ではなく要望なのだが、、、こちらもこちらの意思で協力するわけじゃない。報酬が欲しい。」


「何よ、生き返れた上に素晴らしい力がもらえてそれで尚何かよこせっていうの?

ちょっと欲張りなんじゃない?まぁいいわ。何でも言いなさい、神の名においてあなたの望む物を差し上げましょう」


「流石女神様、話が分かるし気前もいい」


「でしょでしょ?さぁ、何が欲しいの?」


「そうだな、魔物をある程度倒す度でいい、、、」

「--------お前を抱かせろ」


「・・・・・はぁ?頭おかしいの?何言ってんの?マジで何なの?抱かせろってハグでもしてほしいの?」


「そんな訳ないだろう、はっきり言って魔界が、人間界がどうとか俺にはどうでもいい話だ。しかしお前が勝手に決めたせいで俺が人間界の為に動かなきゃならないんだろ?はっきり言ってポテンシャルを保つために見た目だけは良いお前の身体を求める。それが俺の望む報酬だ」


サクヤに主導権を握らせないようまくし立ててやった。


その時俺とサクヤの周りに光の輪が現れ聞いたことの無い言葉が響いた。


「嘘でしょ、、、」


膝から崩れ落ち四つん這いの恰好でサクヤが呟く。


「嘘でしょ?ねぇ!なんで!ちょっとそんな契約認めないから!」


どうやら俺の望んだ報酬は認められたらしい。


「じゃあそう言うことで、よろしくなサクヤ。とりあえず今日は疲れたからさっさとここから出してくれ」


「イヤーーーーーーー!」


拒絶を露わにしているサクヤをよそに暗転はとけ町中に戻っていた。


魔法でも使えるなら色々楽できると思ったが仕方ない。

しかしあの身体を抱けると思うとほんの少しだけやる気が出てきた。


取りあえず今日は今朝頂いた物を出品してどこかで休むことにした。

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今日世界が終わりました masame @masamel

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