第2話 選択肢の意味

死んだ、、、。

ロクな事してこなかったんだ。

死後の世界があるなら間違いなく地獄だろうな。

普通薄れゆく意識の中でこういう事思うのだろうが、全く薄れる気配がない。

実際には死んでみないと分からないものだな。

しかしあんな事があったのに痛みは全く無い。

やはり死んだ事は間違いないだろう。


「ちょっとー?いつまで寝てんのー?もう起きてるんでしょー?」


なんだ?何で話しかけられてるんだ?


「あ、やっぱもう起きてんじゃない!ほら!早く目を開けなさい!」


言われるがままに目を開いてみるとこの世の物とは思えない程の美女俺の顔を覗き込んでいた。


「えっと・・・。」


状況が理解出来ずにいるオレに女は話を続ける。


「はい、あなたは神谷 冬馬≪かみや とうま≫さん。22歳で日本の東京出身。間違いないわね?」


間違いない。

俺は神谷冬馬22歳。


「えっと、はい。間違い、、ないです」

呆けに取られ素直に返事をしてしまった。


「私はあなた達の言うところの女神、名前はどうせ人間には発音出来ないからサクヤと呼びなさい」


随分軽い話し方だ。

そもそも疑わしいが女神ってこんななのか?


こちらの疑心も気にせずサクヤは続ける。


「はい、神谷冬馬さん。あなた生前の記憶はあるかしら? どうやって死んだかおぼえてる?」


さらっと言われたがやはり俺は死んだようだ。


「怪物の様な物に殺された、一瞬で何も見えなくなったから詳しい状況は覚えてない、と言うか分からない」


「そう、その通り。あなたはアレに頭から潰されたのグシャッと。簡単にね」


こいつまるで感情が欠落しているかの様に淡々と人の死に様を話しやがる。


「アレは何だったんだ?そもそも現実か?あんな事ありえないだろ?」


「説明してあげるからちょっと待ちなさい。先ず起こった事は現実よ。信じられないと思うけどあなた達が居た人間界とアレが居た魔界がリンクしちゃったのよ。で、この件に関して私たちが居る神界は正直無関係なんだけど、魔界の領域広げられても厄介だし、少しだけ干渉する事になったの」


ごく当たり前の如く話す女神とやらに困惑しつつ脳内で少しずつ状況を整理していた。


「ちょっと、ちゃんと話し聞いてる?それでね、あなた中々ロクな生き方してこなかったみたいだからこのままだと地獄行き間違いなしなんだけど、もし私達に協力してくれるならもう一度人間界に戻してあげる。つまりやり直しができるの。どう?やるでしょ?」


あー、地獄って本当にあるのか。

まぁあるなら地獄行きなのは分かってたから特にショックも受けないな。


「地獄行きで。今までして来た事自分でも理解してるし特に生き返りたくもない。別の人に頼んでくれ」


これで良い。

どうせ生き返ってもロクな事しないだろうし正直生きていて楽しいと思えた時間など皆無だ。


サクヤがゆっくりとこちらから視線を外し口を開く。


「はい、そうですか、わかりました、、、ではあなたを人間界に戻します」


「おい、話聞いてないのお前だろ!断っただろ!」


こちらの意見は完全に無視され俺の身体が光の粒に変わっていく。


「じゃあ、頑張ってね!」


物凄く嫌な笑顔の女神が視界から消えると目の前に先ほどの異形が腕を振り下ろそうとしていた。

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