メソクレシス

安良巻祐介

 眼鏡をかけた蝶が夢の中に出て来てひらひらと舞うている。

 それをぼんやり見ながら、蝶のあの気味の悪い小さい目玉に眼鏡が必要だろうか、あれは誰が作ったのだろうか、あんな大きさの眼鏡をきちんと造るのはさぞ骨が折れたろうに、蝶一枚のためにわざわざそんなものをこしらえるのは狂人に違いない、などと考えていたら、やがて蝶がひらりとこちらへ近づいて、呟いた。

「うまれてこのかたなにもみえぬがいまおまえだけはよくみえる」

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メソクレシス 安良巻祐介 @aramaki88

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