僕と彼らの可能性

ぎざ

ボクと彼らの可能性


 ボクが玄関を開けると、すぐに彼と目が合った。


「待て。それ以上俺らに近づくな」

 開口一番ひどいことを言うなぁ。

 彼らとの距離はざっとボクの幅5つ分。

 ボクの幅を1メートルと仮定すれば5メートルくらいだろうか。


「どうしてだよ」とボクは彼にずいと近づく。


「ばっ、早まるなよ。命を無駄にすることになるぞ!」

 ボクは疑問に思う。どうして彼にボクが近づくだけで、命を無駄にすることになるのだろう。彼の言っていることはおかしい。


「せめて、俺の目の前からどいてくれないか。ほら、隣の、その隣の列は空いているだろう?」


 確かに、彼の隣の隣の列はがら空きだった。だけど――、

「君の傍にボクが行った方が、強いと思うんだよね」

 自然に、すすすっと、身体が少しずつ彼に近づいて行ってしまう。

 何も行動していないというのに。力を入れていないのに。不思議な力にボクの自由が制限されているかのよう。


「いいから、よく考えろ。お前は今ここに来て良い存在じゃないんだ。今はまだその時じゃない。いいから、俺の話を聞いて、列をずれろ」


「どうして? ボクのいる場所くらい、ボクが決めるさ」

 ゆっくり、少しずつ、ボクは彼に近づいている。


「せめて! だったらせめて後ろを向いてくれないか。そうすればまだ助かる道が……」

 ボクは後ろを向いた。彼はボクと、ボクの背中が同じ色だったことを知った。

「あっ……、そんな……、まさか……!」

 彼の絶望に満ちた声が聞こえた。

 それは奇しくも、彼の色と同じ青色であった。


 ボクは再び彼に向き直る。「どうしたの?」

「回転しても同じだ。だめだ。これ以上、俺らに近づくな」


 もうボクと彼との距離は1メートルもない。

「取り返しのつかないことになるぞ。俺だけじゃない。周りの奴らを犬死させることになるんだ。早く、早く列をずらせ!!」


 ボクは。

 ボクは彼の言葉を無視した。

 彼の言葉を否定することで、ボクの意思を肯定することにした。

「ボクは犬死になんかしない! ココこそが、ボクらが勝つことができる、唯一の場所だ!」

 ボクは、彼の傍に身を置いた。

 瞬間、光に包まれ、ボクと、彼らは消滅した。



 ・-・-・-・-・-・


 〇〇〇〇


 ↓


 ◌◌◌◌


 ・-・-・-・-・-・



 いくぞ!

 2連鎖、3連鎖、4……あれ? ここ繋がってなかったなぁ。

 まーた、3連鎖止まりかぁ。

 せっかく積んだのに、まーたやり直しだ。これまで積むことに費やした時間が無駄になってしまった。早く、積み直さないと、追撃がくる……!


 あぁ、あの時に、隣の隣の列に” 青 ”を逃げさせていれば!!



 某パズルゲームで対戦中。

 僕は大連鎖を構築しているつもり……なのだが、ほぼ毎回、失敗して3連鎖止まりなため、友人たちからは「3連鎖野郎」と揶揄されている。

 友人たちの大連鎖を僕の「3連鎖」によって邪魔されるからだそうだ。


 くそぅ、いつか7連鎖野郎って呼ばせてやるからな!

 


 完






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僕と彼らの可能性 ぎざ @gizazig

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