第39話 底辺冒険者とハチミツ狩り③


 ハチミツの採取方法は大きく分けて2つある。

 1つは蜜を運ぶハチたちを追っていき、巣から採取する方法。


 そしてもう1つは――ハチの体内から直接採取する方法だ。


「おいみんな、あそこを見てみろ。さっそくターゲットが花の密を吸いにやってきたぞ」


 森の一角に存在する草花エリア。

 その周りを囲む木の影に俺たち4人は固まって身を潜めていた。

 視線の先には人の頭大ほどの黄黒の昆虫。

 今回のターゲットであるハチミツバチだ。


「あの虫さんがハチミツを作るんですね……」


 アリシアがゴクリと唾を飲み込む。


 黄色い花が一面に咲くこのエリア。

 今、その中心付近を1匹のハチミツバチが飛んでいる。

 蜜を貯め込みまん丸に太った体はまるで風船のようだ。


「ハチミツバチはああやって花から蜜を吸い上げ、ハチミツとして尻の部分に貯め込むんだ」


「おしりの部分……ですか……」


 アリシアの声音が急に萎縮したものになる。

 細身の体が壊れるのではと思うくらいに、ガクガクと激しく震えだした。

 

「まああれを見たらそうなるよな……」


 蜜を貯め込みぷっくりと膨れたハチミツバチの尻。

 その先端には、人を軽々貫けるほどの大きく太い針が伸びていた。

 初見のアリシアが怯えるのもわかる。

 初見じゃなくても怖いからな。

 

「あれと……戦う……? ――ゴフッ」


 巨大な針で自分が刺される想像でもしたのか、アリシアが白目を向いて吐血する。

 早すぎる戦線離脱。


「ユ、ユーヤ! この間みたいにまたアリシアが血を吐いて倒れましたよ!? だだだ大丈夫なんですか!? 何か病を抱えているのでは!?」


 口元を真っ赤に染めるアリシアを抱え込みながら、ランが慌てた声で俺を呼ぶ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

底辺冒険者ライフを戦力外娘とともに! ~パーティー組んだらますます弱くなった件~ ゆ♨ @nomuro0427

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ