そのとき彼女だけは、一命いちめいをとりとめた。



母方ははがたの親族の通報で駆けつけた警察官により、

取りおさえられた父方の両親は、

今も刑務所に入っている。


だがそれで、

父方の親族全員がいなくなったわけではない。


その報復ほうふくをおそれた母方の両親は、

彼女を施設しせつ保護ほごしてもらう事になる。



こうして彼女は幼くして孤児こじとなったのである。



その後、

彼女の選べる人生はそう多くはなかった。



学費のいらない軍事学校に入学を希望し、

彼女は頭角とうかくをあらわす。


特に射撃訓練ではぐんを抜いていた。



それはそうである。


彼女には目的があったから。


両親を殺した親族を射殺すると言う目的が。


だがそのためには力が必要だった。



権力と言う力が。



その後勉学にも励み、

彼女はトップクラスの成績を残すことになる。



すべては復讐ふくしゅうのために。



そして今彼女は激しい選抜試験を勝ち残り、

この宇宙に立っていた。



アイラはたむろする異国の学生達をながめ、

ある種の安心感と解放感を感じ始めていた。



この国の人たちには、

私のちも私の国の差別もない。



それはラルが始めて感じる解放感だった。



このまま誰ともかかわらなければ、

私はずっと自由でいられるのか、

そんな思いが巡り始めていた。


だが運命の歯車はそんな彼女の思いを、

ちをはかったりはしなかった。



唐突とうとつに彼女の腕にしたバイタルチェッカーが、

鳴り始めたのだ。



それは先ほど別れた、

イーサンと言う女性のかたからだった。


 

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宇宙漂流記【アイラ・ラウ編】 夜神 颯冶 @vx9

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