最終話 Undecided
・・・メイからのメッセージはなかった。
『メイ、今日来てくれてありがとう。』
いつもはすぐに来る返事も、既読にすらならない。
ぼんやりとスマホを眺めた。今日ライブに来てくれたみんなからの沢山のメッセージを見る気にすらならなかった。
5分置きに既読の確認をする俺を不思議そうにマサが見ていた。
「アキ、誰かの連絡待ってるの?」
「まぁ・・・。」
少し冷静になったのかこんな自分もいたのかと客観的に見てる俺もいた。
帰りにメイの部屋に寄ったけど、メイはいなかった。
その数日後、メイが留学したとルカに聞かされた。
どれくらいの期間なのか、どこに行ったのかさえ訊こうと思わなかった。
大事な存在が不意にいなくなった絶望感・・・。以前にも似た感情があったことをうっすら自覚する。
夏休みの間は自分の夢に追いつこうと、音楽活動に明け暮れた。
何があっても夢は諦めない。そう思えるのもメイがいたから。
哀しんでいいのかすらわからない状況でも、音を奏で、曲を書いた。
どこにいたって、メイを探してしまう。
この先メイにまた会えるのかわからない。けれど、俺にとってメイは運命の人だった。
メイに出会って恋をした。
メイに出会って己の欲望を知った。
メイと過ごして穏やかな時間がそこにはあった。
メイの真実を知って絶望した。
それでも、俺はやっぱりメイが好きだと今ならはっきり言える。
この恋愛模様は未だ定まらない。安心できる場所を探し続ける。
でも、男とか女とかそんなんじゃなく、恋をした人がたまたま男だっただけ。
・・・いや、結局俺が恋をする相手は・・・男だった。[完]
≪新曲≫
Identity
作詞:Aki 作曲:Aki
ふわりと鼻をくすぐるその香り もっともっともっと
小さく笑う笑顔も少しハスキーな声も…
罪悪感
何も感じない自分に苛立ち
前向いて立ち 降り出しに戻り
焦燥感
プライドなんてもん いるのか?否か?
全て誤魔化し そんなん無意味
変わりたいだけ ただ変わりたいだけ
虚しさ感じて 背けた夢 そして現実
触れた指先で高鳴る鼓動 もっともっともっと
曝け出してしまえば辿り着けるところもある
ピンクの髪が肩をくすぐるから ちょっと待ってよ ねぇ
キミとの春も夏も花の香りが…衝動掻き立てる
親近感
らしくもない早朝 向かうはベンチ
ゴキゲンで待ち 夢追い迷い
存在感
駆け引きなんてもん いるのか?いらないのか?
結局のところ 同じ境遇
雨の中彷徨う ただただ濡れてたい
虚しさ感じて うなされたり 幻覚見たり
再び会えば動き出す運命 ぐっとぐっとぐっと
躰が疼きだして辿り着くのはその笑顔
秘密の場所が増える度に Ah そっとキッスを Uh
キミとの秋も冬も暖めるから…
出会い 重なる偶然
近づく距離
止められない欲望
突きつけられた現実
・・・それでも募る想い
ふわりと鼻をくすぐるその香り ずっとずっとずっと
小さく笑う笑顔も少しハスキーな声も
恥ずかしそうにはにかむその瞳 ちょっと待ってよ
キミとの春も夏も秋も冬も…全てを愛してる
(作詞著作権:はいしょう虹音)
未定 [Flower Voice Collection 小説シリーズ1] はいしょう 虹音 @leon_haisho
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