最終話 悲壮、そして希望

 アキラの母さんと和解した後、俺はアキラのアパート部屋で自分が異世界でたった1人で生きる事になった経緯を伝えられていた。

 親父の話によると、俺は8年間、人間に換算して4才の頃まで親父と人間の母親と共に、ビーストウォリアーズと親父、虎獣人が戦い続ける中、人里離れた森の中で暮らしていたらしい。だが、親父と虎獣人がビーストウォリアーズの戦力を大半倒し撤退に追い込んだ際、幼かった俺は親父を案じて戦場に駆けつけていた母親から離れ親父の元へ向かったのだという。その隙をつかれ、戦っていた首領の最後の力で異世界へ無作為転移されてしまったのだそうだ。

 第一次ビーストウォリアーズ侵攻の際、組織を退ける事ができたのは親父と虎獣人が獣人達の中でも最強格の存在だったからだとも言っていた。だが、親父には人間を滅ぼす事が使命と刷り込まれていた上、それ以外の存在理由を持たなかった事から首領に従っていたのだそうだ。そんな親父を変えてくれたのが、俺の母親なのだと。人間の女を愛した獣人同士、人間を守るために共に戦った相棒。それがタイガーの父親、虎獣人なのだと教えてくれた。

 その後第二次ビーストウォリアーズ侵攻時、俺が先兵として人間の世界に現れる時まで首領は空間転移の鍵の機能を凍結してしまったらしく、助けに行く事も、ビーストウォリアーズを壊滅させる事も出来なかったらしい。

 合点がいく話だった。それなら、俺は両親の事を覚えていないのも無理はねぇ。

 それでも自分の息子であるという責任感から、俺を人間世界にやってきた時から見守り続け、俺が獣人側として人間を襲う気であれば自ら手を下すつもりだった。そう、親父は言っていた。以前、アキラとタイガーを助けてくれた時、移動先となる街を知っていたのは俺を常に見守ってくれていたからなのだろう。

 幼少時代、物心つく頃には既に1人だった俺は、異世界の森に育っていたわずかな木の実や果物、川の水等で何とか生き長らえてきたのだ。

 全ての経緯を話し終えた後、親父は俺に頭を下げてくる。


「今更親を名乗る気は無い。事情があったとはいえ、お前を長く放置し耐えがたい孤独を与えてしまった。親の資格など無い事は理解している。だが、1つだけ信じてくれ。お前が父と母から愛されて生まれた存在だという事、必要とされていた事。それだけは信じてくれ!!」


 自分に頭を下げる親父を前に、俺は視線を逸らした。

 実際、俺は存在する意味すら見出せねぇ日々を積み重ねていたのは事実だったし、今まで親父達を憎んでいなかったわけじゃねぇからな。なにより、本当の事がわかっても、どうしたらいいのかわからねぇってのが本音だ。


「…………もう、憎んじゃいねぇよ。俺は、境遇や物事から逃げない事を信念としているからな。今まで憎んでなかったと言えば嘘になるが、事情も分かったんだ。もう、親父達を憎んだりしねぇよ」


 親父はゆっくりと頭を上げた。


「……お前につけた『ブレイブレオ』という名は、半獣人という宿命に負けない勇気を持つ者に育ってほしいとの意味を込めて母さんと決めた名だった。お前はその名にふさわしい立派な男に育ってくれた。今度は、私がお前の為に何ができるかを考える番だ」


 俺はわずかに下を向き考えた後、親父と目線を合わせる。


「……だったら、俺やアキラ、タイガーに本当の危機が迫った時は助けてくれ。ビーストウォリアーズの真の目的は、人間の獣人化だとアキラの母さんは言った。獣人の中にも親父のように分かり合える者もいる。それが人間達に伝われば、奴らの作戦を挫く事も可能かもしれねぇ。だから、頼む」


 俺の願いを聞き、親父は初めて笑顔を見せる。


「ああ、約束する」


***


 短期間借りる予定のアパート部屋の中。俺は床に横になりながら、数日前の親父との会話を思い出していた。

 胸が、こんなに温けぇ……。これが、幸せなのかもしれねぇな。今の俺には、俺自身を見て認めて心配してくれる友が、和解できた同じ境遇の仲間が、俺をずっと見守ってくれていた親父がいてくれる。これからは、あいつらの為にも自分をもっと大事にしねぇとならねぇな。俺はもう、1人じゃねぇんだから。

 俺はいつの間にか顔をほころばせ、表情を崩していたようだった。孤独の中で冷え切った心から硬くなっていた表情が、いつからかこんなに柔らかい物に変わっていたらしい。


「!!!」


 それまで俺は、心が満たされ幸せを感じるあまり携帯ラジオの内容を聞き流してしまっていた。そんな俺の耳に信じられないニュースが聞こえる。


「ブレイブレオが……人間を……殺害した?」


 そんなはずはねぇ。なぜなら、今俺はここにいるのだから。しばらく呆然としていたが、俺はすぐにアパート部屋を出る。人気の無い路地に入り、即座に半獣人体に変身すると空間転移の鍵を掲げる。

 ビーストウォリアーズの新たな作戦か!! 俺が今まで築き上げてきた、人間達との信頼を奪おうってのか!!!


***


 移動先の街は逃げ惑う人間達の阿鼻叫喚が木霊していた。民家の屋根やビルの屋上を跳躍しながら移動する中で、俺の姿を目にした住民達は本気の悲鳴を上げる。


「いやあぁぁーー!!!」

「来るなぁああーー!!」

「やっぱり奴も獣人の仲間だったんだ!!」


 悔しいのか、それとも悲しいのか。

 俺は悲鳴を上げる住民達から目を伏せ、歯ぎしりをするしかなかった。

 こんなに脆い物なのか? 俺は今まで疲れ果てようが、死にかけようが人間の為に戦ってきた。なのに、信頼ってのはこんな簡単に崩れちまう物なのか?

 逃げ惑う人間達の悲鳴に晒されながらも空中を跳び続け、俺は遂に偽物のブレイブレオを発見する。その姿はライオンの獣頭に真紅のパンタロン、漆黒のエナメルシューズに至るまで、俺と瓜二つだった。偽物のブレイブレオが、人間の1人を後ろから貫手で刺し貫いている。

 「俺」が、人間を殺している!!


「止めろ、止めろ!! 止めろぉおおーー!!!」


 即座に飛来した俺は、偽物のブレイブレオに殴りかかる。だが、偽物は人間を貫いていた右手を引き抜くと、俺から即座に距離を取る。俺は残され倒れた人間を抱き起こしたが、既に息は無かった。

 その人間を静かに寝かせた俺は、偽物に憎悪を込めた視線を向ける。


「殺す前に1つ聞かせろ。てめぇ、一体何者だ? 何が狙いでこんな真似を!!」


 偽物のブレイブレオは、俺の問いに醜悪な笑みを浮かべる。その後、俺と瓜二つだった姿を直立したカメレオンの姿に変化させた。


「決まってるだろ!! 貴様の人間達からの信頼を失墜させるのが目的さ! これもコウモリ獣人が立案した作戦の一環でな!!」

「あのコウモリ野郎か!!」

「ケケッ、それはそうと、これで貴様の信用は地に落ちたも同然!! どうだ、今からでも我らの側へ寝返る気はないか? ここで寝返っておいた方が、貴様にとっては得策かもしれないぞ?」


 やはり、俺は弱い。そう思った。たとえ一瞬だったとしても、心が揺らいだんだからな……。

 だが、俺の脳裏に悲しそうな顔をしたアキラが思い浮かんだ。そして、いつかアキラと交わした約束を思い出した時、俺の迷いは一切無くなった。

 俺は約束した。アキラの友であり続けると。そして、アキラを信じ続けると。……俺は、死んでも友は裏切らねぇ。


「……断る。俺はてめぇを倒して、身の潔白を証明する。そして、もう一度人間の信頼を取り戻してみせる!!」


 俺は言い終わると同時に、カメレオン野郎に殴りかかった。だが、奴は擬態能力で周囲に同化し姿を消しやがった。

 逃げた……だと。


「ここまでして、逃げるだと!! 畜生!! 戦いやがれぇぇーー!!!」


 天を見上げた俺は、ぶつけようのない怒りの咆哮を周囲に響かせた。


***


「……ライオンのおじさんが人を殺すわけない。あのライオンのおじさんは絶対偽物だよ!!」


 小学校からの帰り道、俺は人気の無い路地にいた。そして、俺を護衛してくれていた虎のおじさんを相手に昨日の事件について話していた。

 今までの思い出があったから、俺はライオンのおじさんを信じる事が出来たし疑っていなかった。


「人間に賛同するのは癪だが、俺も同意見だ。あれほど人間を守る事に必死だった奴が、今更人間を殺すはずなど無い。……ところで、貴様人間の友がいるのではなかったのか? 貴様は俺が護衛を始めた頃から今まで、ずっと人間の友と下校していたではないか」

「…………虎のおじさん、心配してくれるの?」

「違う。ただ、気になっただけだ」


 それを心配してるって言うんだと思うけど。

 少しだけ嬉しかったけど、虎のおじさんは険しい表情のままだった。

 内心そんな事を思っていた俺は、何があったのかを正直に話す。


「昨日の事で俺のクラスにいる全員が、ライオンのおじさんを裏切り者とか言って急に獣人と同じだって言いだしたんだ。俺があのライオンのおじさんは偽物に決まってるって言ったら、またクラスから仲間外れにされちゃってさ。今まで友達だった奴とも、またただのクラスメイトに戻っちゃったんだ。でも、俺は後悔してないよ!! 俺にとって一番大事な友達はライオンのおじさんだからさ!!」


 いつの間にか悲しい表情になっていたかもしれないけど、俺は最後に笑顔を作ってみせた。虎のおじさんにも強がりだって事はわかってたと思うけど、後悔が無いのも本心だった。


「……貴様も人間なら奴を、レオを裏切ればよかったではないか。そうすれば、その友達とも今まで通りでいられたのだぞ」

「言ったじゃないか!! 俺にとって一番大事な友達はライオンのおじさんなんだよ!!」


 わかってたけど、虎のおじさんは俺を疑いの目で真っ直ぐ見てくる。


「貴様は怖くなかったのか? 多くの人間達の中で自分の意志を貫く事が。人間は異端の存在を排除する。貴様はこれからまた学校で孤立し、いじめられるかもしれないのだぞ」


 その言葉に、俺は虎のおじさんから少しだけ目線を逸らした。でも、すぐに目線を戻すとはっきりと言う。


「そんな事わかってるよ!! でも、俺はライオンのおじさんと友達であり続けるって約束したから!! 俺だって、ライオンのおじさんを助けたいんだよ!!!」

「!!!」


 虎のおじさんはなぜか大きく目を見開いて、少しの間下を向いて考えていたようだった。そして、顔を上げると俺を真っ直ぐ見据えた。


「……光」

「虎のおじさん!! 今、俺の事名前で」

「どうやら俺は、お前の強さを全く理解できていなかったようだな。今まで貴様を守っていたのは、レオとの約束があってこそ。だが、その覚悟分だけはお前を認めてやる。レオとの約束とは関係なく、これからはお前自身のためにも戦ってやろう」

「……ありがと」

「光、お前の強さはきっとレオの力になるはずだ。今奴を支えられるのは、お前と俺だけかもしれん。だから、今すぐ奴の所へ行き支えになってやれ!!」

「うん!!」


 虎のおじさんが敵の獣人から奪った空間転移の鍵を1本くれる。そして、俺達はライオンのおじさんとゴウキおじさんの両方を頭の中に強く念じた。


***


 突然アパート部屋に湧き起こった眩い光に身構えていた俺だったが、相手がアキラとタイガーだとわかりファイティングポーズを解いた。


「アキラ、タイガー……」

「ゴウキおじさん……」


 俺はアキラの目を真っ直ぐ見つめ、必死の形相で弁明する。


「アキラ、信じてくれ!! 俺は人間を殺しちゃいねぇ!! あのブレイブレオは、擬態能力で俺に化けたカメレオン獣人だったんだ!!」

「……俺は、おじさんを疑ったりしてないよ。最初から、あのライオンのおじさんは偽物だって思ってたから。皆おじさんを裏切り者だって言ってたけど、俺はおじさんを信じてたんだよ」

「レオ、光は、小学校の連中がお前を一転して敵視する中でお前の味方をしたそうだ。それまでの友を失い、再度孤立する事を承知の上でな。お前との約束とは別に、俺も光の強さを知った。だから、これからは光自身のためにも戦ってやろうと思っている」


 安心感から息を吐き出していた俺だが、次のタイガーの言葉を聞きアキラの眼前に近寄った。

 アキラが、友を失った? また、俺のせいでアキラが苦しんだってのか?


「アキラ、お前が俺の味方をしてくれた事は、本当に嬉しい。だが、今すぐショウガッコウの奴らの所へ行って謝るんだ。俺の為に、お前まで傷つく事はねぇ!!」

「俺は、おじさんの力になりたくて」

「アキラ。俺は、これ以上俺が原因でお前に苦しんでほしくねぇんだ!! 今まで友達のいなかったお前が、やっと作る事ができた友なんだろ? 俺のせいで、また孤立する事はねぇ!! だからアキラ、今すぐ」

「だって、俺にできる事なんてこんな事くらいじゃないか!! おじさんがボロボロになって戦ってくれても、俺にはおじさんを助けられる力が無い。俺だって、おじさんを少しでも助けたいんだよ!!」

「俺の事はいい!! だからアキラ、今すぐショウガッコウの奴らに謝りに行け!!!」

「絶対に嫌だ!!!」


 俺はアキラに、獣人に叫ぶ時と同じくらいの大声で叫んだ。だが、俺の怒号のような大声にも、アキラは怯まずに大声で叫び返してくる。

 俺達は、友となって初めて本気の喧嘩をしちまったんだ。

 ……怒っているわけじゃねぇ。本当は、アキラと喧嘩なんかしたくもねぇ。だが、ここで退いたらアキラはまた孤立するんだ……。喧嘩してでも、心を鬼にしてでも、アキラがまた俺のせいで苦しむ事だけは避けなければならねぇ!!


「おじさんの馬鹿!!」


 アキラは叫ぶと首から下げていた鍵の一本を使い、俺のアパート部屋から去っていった。俺達のやり取りを見ていたタイガーが、アキラを擁護してくる。


「レオ、お前は理解しているのか? 光が小学校の連中からお前を庇ったのは、相当な勇気がいる事だったと思うぞ。大勢の人間がいる中で、自分を貫く。これも一つの強さだと俺は思うぞ」


 俺はタイガーから顔を背け、寂しさを隠して答える。


「タイガー、これがあいつのためなんだ。俺の為に、これ以上アキラが苦しむ必要などねぇじゃねぇか……」


 アキラに言った事は正しいと思っているし、後悔もしてねぇ。それでも、内心寂しさを感じていたのはタイガーにばれていたかもしれねぇな。


「俺の信用を失墜させるのが目的なら、もうカメレオン野郎は俺の姿では現れねぇかもしれねぇ。だが、今度現れたら、その時は俺自身の手で必ず潔白を証明してみせる!!」


***


 だが、数日後偽物のブレイブレオは再び姿を現しやがった。二ホンのある大都市で破壊活動を行っているというのだ。肉体の鍛錬に励みながら携帯ラジオに聞き耳を立てていた俺は、即座に立ち上がる。


「現れやがったか……」


 もう現れねぇかもしれねぇと思っていたが。……何かの罠か? だが、やるしかねぇ!! 奴を倒し、俺自身の手で潔白を証明してやる!!

 拳を握りアパート部屋の中で決意を固めると、俺は即座に変身して、ポケットから空間転移の鍵を取り出し掲げる。

 俺が身の潔白を証明すれば、アキラだってまた友と仲直りできるかもしれねぇ。たとえ信頼が壊れやすい物だったとしても、だからこそ大切にしたいし、失いたくねぇ物だ。人間達に失望を感じる事はねぇ……。


***


「ケケケッ、身の潔白を証明しに来たというわけか?」

「そうだ、俺はてめぇを倒して潔白を証明する!! そして、人間達の信頼を取り戻してみせる!!」


 「俺」が2人いる光景に、都市の人間達も困惑しているようだった。


「ブレイブレオが……2人?」

「どっちが本物だろうと、どうでもいい。逃げようぜ!!」


 その言葉と共に走り去っていく人間達を目にした俺は、ファイティングポーズで作っていた拳を強く握った。そこに、一瞬の光と共にタイガーが姿を現す。


「レオ、加勢するぞ!!」


 血塗れの「俺」に敵意の視線を向け、タイガーは俺に叫ぶ。


「悪いがタイガー、手を出さないでくれ!! こいつだけは、俺自身の手で倒さなければ意味がねぇんだ!!」


 俺が偽物に向かって駆け出そうとしたその時、突然俺の足元にある影からコウモリ野郎が姿を現しやがった。コウモリ野郎が俺の左首筋に鋭い牙を突きたてた。


「ぐぁ!!」


 鋭い牙を突き立てられた事で痛みは感じるが、俺はすぐに力づくで引き剥がそうとした。


(半端者、私の声が聞こえるか?)


 俺の脳内に、コウモリ野郎の精神感応能力を使用した声が響いてくる。


(コウモリ野郎、今はてめぇの相手をしてる場合じゃねぇ!!)

(今私の牙には、貴様の中にある人間の血を一時的に失わせる薬を塗ってある。貴様は人間の血を失い、獣人と化す。そして、その手で人間共を殺す事になるのだ)

(な、なん……だと)

(理解するがいい、この私の計画を)


 コウモリ野郎が精神感応能力を使い、俺の脳内に自身の企みを伝えてくる。


(全人類の獣人化には、獣人達を使い人間達を襲わせていた事もあり「獣人に対する」憎しみを抱いていなければ獣人化できないのでな。カメレオン獣人を使い貴様に対する負の感情を人間共に抱かせた後で、貴様を獣人化させ人間を殺させる。そうすれば、人間共の貴様への親愛の情は失われ、逆に憎しみを抱くだろう。どうだ、半端者? 自らが原因で人間共を支配される気分は)


 コウモリ野郎の顔を力づくで引き剥がした俺は、奴を前方へ強引に投げ飛ばした。


「そんな計画が上手くいくか!! 俺は、絶対に、お前達から……人間……を」


 背中に冷たい物が走り、ぞっとした。

 俺の中にある人間を守護する事への誇り、タイガーへの強い仲間意識、アキラとの思い出と何物にも代えがたい友情が別の何かに置き換わっていくのがわかったからだ。

 いや、認めたくねぇが、何に変化しているのかは嫌でもわかる。

 ……壊して、殺して、奪い尽くしてぇ!! 目につく者全ての命を奪い、殺してぇ!! 

 人間達は今まであんなに戦ってきた俺を否定したじゃねぇか。だったらよ……。

 だ、駄目だ……。俺は……人間を守りてぇんだ。だから、絶対……に……。


「グッ、ガアァ」


 俺の中に残っていた理性が、自分の放った獣のような声を最後に消え去った。


「ガアァァァアァァアア!!!」


***


「おい、レオ!! どうしたのだ!!」


 レオは理性を感じさせない赤い瞳で、頭上を見上げて咆哮する。その姿は、獲物を求めて暴れるだけの獣のようであった。

 そんなレオの目に、1人の人間の男が目に入った。レオが男に向かって目にも止まらぬ速さで近づく。


「レオ、一体何を!!!」


 次の瞬間、レオの右腕が男の胴体を貫いていた。レオが激しく飛び散る血しぶきを浴び、鮮血を吐き出した男が仰向けに倒れこむ。

 獲物を探すかのようなレオの目が、他の人間達を捉えた。駆け出そうとするレオを、突如現れたライオン獣人が背後から羽交い締めにする。


「すまない!! 戦闘員共に阻まれ、援護が遅れた!! タイガーアベンジャー、私がレオやコウモリ獣人達を抑え込んでいる間に早くあの人間の治療を。頼む!!!」

「ど、どうしたんだレオ!! おい、コウモリ獣人!! レオに一体何をした!!!」


 俺は偽物のレオと並び立っているコウモリ獣人を問いただす。


「ただ奴の中にあった人間の血を、薬で一時的に失わせただけさ。所詮、半獣人。その脆弱な肉体は、父であるライオン獣人の血に耐えられない。奴から人間の血が消えれば、奴が容易く理性を失い暴走するのは目に見えていた」

「な、なんだと!!」

「これも我が計画に必要な事なのでな。奴には自らの手で人間共を殺してもらう」

「……俺は人間を救う気など無い。だが、俺の居場所である者の心を壊させるわけにはいかん。レオに傷つけられた人間には、生きてもらわねば困る!!」


 俺は即座にレオが傷つけた人間に駆け寄る。そして、回復能力を持つ霧でその人間を包み込んだ。


「させん。人間共の信頼を得ている奴を獣人化している今なら、この都市にいる人間共くらいなら一気に獣人化する事も可能だ」

「そんな事が……」

「可能だ。私の能力である、影に干渉する力と精神感応能力を使えばな。影とは、いわばその者の闇を象徴する存在。私が影を通し、人間共の心に入り込み負の感情を固形化して取り出す。その物体に様々な動物の細胞を打ち込み、人間共の身体に打ち込む。既にこの都市には人口と同程度の戦闘員を結集させている。戦闘員共に動物の細胞を打ち込作業を行わせて、あとは私がその物体を遠隔操作で元の人間に打ち込むのさ。完成した獣人化技術のお披露目というわけだ」


 コウモリ獣人の言葉に、ライオン獣人はレオを羽交い締めにしていた腕を放す。そして、人間達に向かって駆け出そうとしたレオに対して両手を向ける。


「フレイムトルネード!!!」


 ライオン獣人が叫ぶと、レオの姿は炎の竜巻に包まれ見えなくなる。


「レオ!!」

「安心しろ!! 炎の竜巻に閉じ込めただけだ。これ以上我が息子に人間達を傷つけさせるわけにはいかん!!」


 傷ついた人間の男を治療し続ける俺を背にして、ライオン獣人は奴らに向かってファイティングポーズをとった。


「コウモリ獣人、カメレオン獣人。貴様達は私が倒す!!」

「老いぼれのライオン獣人如きが。半端者を抑え込んでいるあの技には、かなりの力を注ぎこんでいるのだろう。そんな状態で私とカメレオン獣人、両方を相手にする事などできると思っているのか?」

「私は、自分の息子に何もしてやれなかった……。今こそ、私がするべき事をする時なのだ!!」

「……カメレオン獣人、私は作戦の仕上げにかかる。その間、あの老いぼれの相手をお前がしろ」


 コウモリ獣人が地面に片手をつけた。最初何をしているのかわからなかったが、頭の中に

奴の感情を感じさせない低い声が響いてくる。


 今まで貴様らを守ってきたブレイブレオは、今完全な獣人と化した。もう、貴様らを守るヒーローなどではない。我らと同様、貴様らを滅ぼす恐怖の代名詞となったのだ。


「コウモリ獣人、今の声は何だ? 何が狙いだ!!」

「影に干渉する力と精神感応能力で、この都市にいる人間達の影を介し、奴が獣人と化した事を伝えた。力の消耗は激しいがな。言ったであろう。人間の獣人化は『獣人に対する』憎しみを抱いていなければ成立しないと。奴が半獣人である事は、人間達にもかなり伝わっているはずだ。奴が獣人と化した事を人間達に理解させなければ、人間の獣人化はできん。カメレオン獣人の役目は、人間達とあの半端者に双方への不信感を植えつける事。あの半端者に打ち込んだ薬品は、心が揺らいでいれば尚更効力を発揮しやすくなるのでな。あの半端者への親愛の情を失わせ、憎しみを抱かせる作業は奴自身にやってもらう」


***


「ガァァアァア!!!」


 出られ……ねぇ。何をしても。だが。あぁ、なんて、軽くて楽しいんだ……。今までずっと感じていた、俺は劣っているという気持ち。決して完全に消える事が無かった、凍てつく孤独感。今は全然、感じねぇ。俺の心は、今までこんなにも重い物を背負っていたのか……。

 邪魔な炎の壁を突き破ろうと、俺は残っている異能の大半を身に纏わせた。

 痛てぇ……。肉が裂けて、血がこんなに流れやがる。……どうでもいいじゃねぇか。俺にこんな重い物を背負わせていた奴らを、この手で全員殺してやりてぇ!!

 真紅の炎を纏った俺は、跳躍すると全身をドリルのように回転させる。


「グォオオォオオオオ!!!」


 それまで歯が立たなかった青き炎も、限界まで力を振り絞った今の俺なら突破できる確信があった。それほどに、今まで感じた事の無い力が湧き上がってくる。

 真紅の竜巻となった俺は、青き炎の暴風を突き破り脱出した。


「くっ、まだこの人間の治癒は終わっていないというのに!! おい光!! お前が鍵の力で駆けつけたところで、今のレオは獲物を求めて動くだけの獣と変わらん!! 今の俺はお前を守る程の余裕は無い!! 殺されるぞ!!!」


 誰かが放った必死の叫びが聞こえた。目を向けると、虎の頭をした奴と人間のガキがそこにいた。

 アキラ……。アキラ? なぜだかわからねぇが、俺にとって、とても大切な者の名前だった気がする。

 その「アキラ」が、俺に向かって話しかけてくる。


「俺、まだおじさんの強さを信じてるから。おじさんが獣人達の作戦に負けたりしないって、信じてるから!!」

「無駄だ光!! 早く逃げろ!!!」


 俺の中にある衝動が、奴らを殺せと言ってくる。虎の頭をした奴に向かって、俺は目にも止まらぬ速さで近づき拳を振り上げた。そんな俺の前に、「アキラ」が立ちはだかる。


「ライオンのおじさん……ブレイブレオ!! 止まれぇえええーー!!!」


 ライオンのおじさん……。そうだ、アキラは俺の!! 


「あ……き…………ら……」


 俺の拳が、アキラの左頬をわずかに掠める。だが、俺が傷つけたのはそれだけで済んだ。俺の放った拳は、アキラにもタイガーにも致命傷を与えずに済んだんだ。

 ハッとした。コウモリ野郎に打ち込まれた薬品の効果が切れたのか?


「あ、あ……きら」


 アキラの左頬近くに右腕を突き出した状態で、俺はアキラの左頬から流れる赤い血を呆然と見る。


「ライオンの……おじさん。よかった。元に……戻ったんだ……ね」


 アキラはわずかに笑みを浮かべると、その場で気絶しうつ伏せに倒れ込んでしまった。


「おい、アキラ!! アキラ!!!」


 俺はアキラに声をかけるが、アキラは起きなかった。だが、自分のした事を思い出し、タイガーが治療し終わった人間の男に視線を向ける。

俺が……やった?

 怖かったが、認めたくなかったが、確かに全ての事が記憶にある。破壊衝動に負けて全て壊し、殺そうとした事。1人の人間を深く傷つけて命を奪いかけた事。

 俺は……負けたんだ。自分の弱さに。俺の脆弱さが、人間を傷つけアキラの命すら奪いかけたんだ……。

 猛烈な恐怖心と後悔の念に支配され始めていた俺の頭部目がけて、一発の銃弾が放たれる。俺は咄嗟に炎の力を集中させて、銃弾を溶かし防ぐ。銃弾を放ったのは、遅れてやってきたジエイタイの一人だった。


「あんたは、俺達人間の味方じゃなかったのか? あんたも獣人の仲間だったのか?」


 問いかけてくるジエイタイの男に、俺は両手に震えを感じながら考えていた。

 今俺が獣人の仲間だったと言えば、獣人に対する憎しみを抱いていなければ人間の獣人化はできない奴らの計画を挫く事も可能だ。俺は半獣人だからな。俺が半獣人に戻った事を人間達に伝えた上で、俺が人間達の憎しみを引き受ければ。だが。

 ……アキラは、こんな状況だったのか? 周り全てを敵にする覚悟で、俺の為に約束を果たしてくれたってのか? そんな事も理解できずに、俺はあいつの覚悟を……。やはり、馬鹿で弱ぇんだな、俺は。


「どうなんだ!! ブレイブレオ!!!」

「ハッ、半獣人に戻っちまったな。もう少しで、俺も完全な獣人になれたってのにな……」

「何!!」


 ……獣人を殺す事でアキラのような人間が救われるなら、俺だけが傷つけばいい!!         こんな馬鹿で弱ぇ俺でも、そんな人間を救えるのなら。自分を捨てるんじゃねぇ!! 自分の命を、活かすんだ!!!

 俺は震えが走っていた両手を強く握ると、ジエイタイの男に無表情で答える。


「ああ、そうさ。俺は最初から獣人側の存在さ。首領の狙いは、全人類を憎しみの心を用いて獣人に改造する事だからな。俺が人間の信頼を得た上で獣人となり人間を裏切れば、獣人化に邪魔な親愛の情を無くさせて人間を一気に獣人化させる事が可能だ。全ては半獣人である俺が、完全な獣人になるための計画だったのさ!」


 俺がそう言った直後、俺とタイガーに向かって無数の銃弾が浴びせられる。タイガーは氷の盾を作り出して防御するが、俺は自分の異能で防ごうとはしなかった。

 もう、いいじゃねぇか……。この都市の人間は守ったんだ。それに、もう俺が人間に受け入れられる事もねぇ。今感じている絶望にも、俺自身の脆弱さにも、耐えられる自信など全くねぇんだから。


「おい、レオ!! 何をしている!! 早くガードを!!!」


 防御も生きる事も放棄した俺に無数の銃弾が浴びせられようとした時、満身創痍の親父が俺に顔を向ける形で立ちはだかる。


「ぐぁあああぁああ!!!」

「親父!!」


 親父は荒い呼吸のまま立ち続けると、命を投げ出そうとした俺に声をかけた。


「勝手な事をして……すまない。レオ、お前の選んだ道を止める権利は、誰にも無いというのに。だが、それでも私は、お前に死んでほしくないんだ……」


 親父の身体が、光の粒となり消滅し始める。


「……ああ、本当に勝手だよ。そう思うなら、これからも俺の事を見守っていてくれよ!! いざという時は、助けてくれよ!!!」


 今までは、親父に何をしてほしいのかわからなかった。俺はただ、俺を無条件で必要としてくれる親父に傍にいてほしかったんだ。アキラとも、タイガーとも違う。俺を最初から必要としてくれたのは、親父だけだったんだからな。

 親に死んでほしくないと思ってもらえる。それだけで、こんなにも温かい気持ちになるなんて俺は知らなかったんだ。だから、消えないでくれ!! 


「すまない。だが、私は今幸せだ。最期に、一度でもお前を守る事ができたのだから。お前の、力になれたのだから……」


 親父は満足の言葉を言い残して、消滅した。最期に見た親父の顔は、優しげだった。

 俺は、その場に膝をついた。パンタロンのポケットから、空間転移の鍵を一本取り出す。


「うわあぁあああぁ!!!」


 涙を流しながら空間転移の鍵を掲げた俺は、絶叫と共にその場から立ち去った。


***


「光。おい、光!!」

「…………虎の……おじさん」


 目が覚めた時、俺は病院のベッドに寝かされていた。傍には、人間の姿になった虎のおじさんが立っていて、少しだけ心配してくれているような表情を浮かべていた。俺は周囲に視線を向けたけど、いると思っていた人はいない。


「レオなら、お前が気絶した後どこかへ姿を消してしまった。自分が人間を傷つけたのは、全て自分の意志だと言ってな」

「!!! ライオンのおじさんが、自分の意志で人間を傷つけるわけ」

「ああ、俺もそう思うぞ。だがな光、全ての人間がお前のように奴を真っ直ぐ信じられるわけではないのだ。どんな考えがあったにせよ、レオを自らの意志で人間を傷つけたと、全ては半獣人である自分が完全な獣人になるためだと認めた。今後奴に近づけば、お前も俺も迫害される事は確実だろう」


 虎のおじさんが病室のドアに向かう。


「待ってよ、虎のおじさん!! 俺も一緒に行くよ!! ライオンのおじさんがいる所に」


 ドアに顔を向けたまま、虎のおじさんが険しい声色で答える。


「力がある俺はいい。だが、何の力も無いお前が今後奴に関わるのは危険すぎる。だから、おそらくここが潮時なんだ。俺も、お前が弱い人間だとは既に思っていない。だから光、お前を大切に思うレオの為にも」


 俺はベッドから降り、立ち上がった。


「ライオンのおじさんは絶望してるかもしれないんだよ!! 何もしなかったら、そんなのおかしいよ!! 自分と対等だって認め合って、支えたり支えられたりするのが友達じゃないか!! 俺だって、ライオンのおじさんに助けてもらってばかりは嫌なんだよ!!!」

「……もっと早く、お前のような人間に出会えていたらよかったのにな。そうであれば俺も、人間に絶望せずに済んだかもしれないな」


 虎のおじさんが振り返った。俺には今まで険しい顔しか見せなかった虎のおじさんなのに、その表情はどこか優しげだった。


「行くぞ!! 俺達の大切な友を助けるために!!」

「うん!!」


 俺は誕生日プレゼントとして渡されていた鍵、最後の一本を握った。


***


 これでよかったんだ……。俺は俺が認めた強い人間を守るために、戦ったんだからな。たとえ、全てを失ったとしても。……友を失ったとしてもだ。

 俺は近くに灯台がある、とある砂浜にいた。青い月明かりを正面から受け、俺は自身に言い聞かせ続ける。そんな俺の後ろに、一瞬の光が湧き起こった。


「ライオンのおじさん!!」

「何の用だ? 小僧」


 後ろに現れたアキラを振り返らず、俺はまるで他人のようにアキラに返す。


「おじさんにただ会いに来たんだよ。俺はおじさんを信じてるし、一人じゃ誰だって寂しいじゃないか」

「殺されたくなければ、俺に近づくな!! 俺は獣人側の存在だ。人間を殺める事など、何とも思っちゃいねぇ!!」


 俺の脅しに怯むことも無く、一歩一歩砂を踏む音が大きくなっていく。


「来るんじゃねぇ!! 殺されてぇのか、小僧!!!」

「何でそんな事心配するの? 本当に殺す事を何とも思ってないなら、殺せばいいじゃないか」


 俺は自分のすぐ後ろまで近づいていたアキラの首を掴む。そして、高く持ち上げた。


「光!! おいレオ、本気か!!」

「わかったか小僧!! 俺は自分を完全な獣人にしてもらうために、人間を傷つけた。俺に殺されたくなけりゃ、今すぐ」

「……だって……おじさん……泣いてるじゃ……ない……か」


 そう言われて、俺は自分の目元を拳でこする。確かに、俺は泣いていた。


「俺だって……一人は……寂しかった……から。それは……おじさん……だって……同じだろ?」


 俺は、アキラをゆっくり下ろした。そして、両膝を地面につくとアキラを強く抱きしめる。


「…………ああ。アキラ、お前の言う通りだ。一人は、寂しいよな……」


 アキラを抱きしめた俺は、堪えていた物を抑えきれなくなり大粒の涙を流していた。止めようと思っても、次から次へと熱い涙が溢れてくる。

 まだ、残っていた。俺にはもう何も残っていない。全てを失ったと思っていたのに。

 アキラはそんな俺の背中を、ただポンポンと叩いてくれた。

 それから俺は、アキラとタイガーに全てを話した。全てはコウモリ野郎の作戦から人間達を守るためであった事を。全てを話し終えた後、俺はアキラに向かい合うと聞いた。


「アキラ、なぜなんだ? なぜ、お前の心はそこまで強い? 俺がお前の立場なら、お前のように俺の暴挙を捨て身で止めて、俺の元へ来る事ができたかわからねぇ。一体なぜ、そんな強さを持てる?」


 アキラは、笑顔を見せると誇らしげに言ってくれた。


「……俺は、おじさんが思っている程強くはないよ。俺が信じられるのは、相手がおじさんだからなんだよ!!」

「!!!」


 俺もタイガーも、相手を信じる事を恐れていた。信じる事は、自分の心も傷つく事かもしれねぇから。たとえ信頼できる存在でも、俺にはこんなに真っ直ぐ相手を信じる事はできねぇ。アキラ、お前こそが、俺にとってのヒーローなんだ。

 ……俺は、まだまだ弱い。目の前にいる友の半分にも満たない程に。だが、これからも俺は戦う!! 人間のために!! こんな小さな身体に大きな優しさと本当の強さを持つ、真の友のために!!!

 俺は、アキラに自身の拳を差し出す。


「アキラ、俺は改めてお前に誓う。何があっても、お前と、お前の生きる世界を守り抜くと!! 絶対に約束だ!!!」

「俺も誓わせてもらう。人間共を守るのではない。あくまで、お前達二人を守る事を!! お前達の存在が、俺の居場所なのだから」


 突き出される二つの拳に、アキラも自身の拳を差し出した。そして、俺達はそれぞれの拳をぶつけ合った。

 そこに一瞬の光と共に、コウモリ野郎が姿を現す。アキラの前に、俺とタイガーが立ち塞がった。


「よくも、やってくれたな!! その上、あのような老いぼれにカメレオン獣人まで!!」

「残念だったな。てめぇの思い通りにはならねぇぞ!!」


 初めて無表情を崩し顔を歪めているコウモリ野郎に、俺は告げた。


「俺はもう迷わねぇ。アキラのような人間が救えるのなら、てめぇら獣人共を滅ぼす事だってしてやる!! 罪を負ったとしても、俺が人間を守る!!」

「出来もしない事を!!」

「タイガー、アキラを頼む!! コウモリ野郎、てめぇの相手は俺だ!!」


 俺はコウモリ野郎に向かって駆け出した。

 俺がやっている事は、人間から見ただけの正義。それは確かにそうかもしれねぇ。だが、守りてぇ者のためなら罪だってこっちから負ってやる。それで俺の大切な存在を守れるのなら。それが、俺の正義だ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真・ビーストウォリアー ネガティブ @tomoya5313

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ