花屋

雨上がり、公園のベンチはまだ濡れているだろう。

コンビニのイートイン・コーナーは、

この時間、人であふれている。

少し時間をずらした方がいいかと、

その辺を散策することにした。

大通りから中に入る道。

奥の方に花壇のようなものが見えた。

はじめて歩く道は少しワクワクする。

少し歩くと、また雨が降り出した。

急いで花壇のところまで歩いて行く。

花屋かと思ったら、喫茶店だった。

まあいいかと思い、中に入る。

店内は空いている。

この時間なのに。

「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」

僕は窓際の席に座る。

全面がガラスの窓の外にはテラスがあって、

店の前と同じく、花であふれていた。

「キボウだ」

「なに、その物を見るような言い方」

「何してるんだよ」

「バイトだよ」

「バイトできる時間じゃないだろう」

カウンターからマスターがこっちを見ている。

「キボウの友だちかい」

「コッキ君。覚えてないかな、中学の同級生」

マスターが首をかしげている。

「そんなに親しくなかったろう」

「意外と親同士って知ってるものなのよ」

「そうか、ママなら知ってるかも」

どうやら、ここはキボウの家らしい。

「ここで、コンビニのパン食べてもいいかな」

「かまわないけど、この状況を見て言ってるのかな」

「たしかに空いてるね」

「今日はこんな天気だから」

「いつもこんなもんですよ」

カウンターの方からマスターの声。

「コーヒーお持ちしますから、ゆっくりしていってください」

「パパのコーヒーは絶品なの、本職は建築士なんだけど」

「こら、余計なこと言うな」

マスターがテーブルにコーヒーを置いて、カウンターに戻っていく。

「ねえ、暇なんでしょ。ウチでバイトしない」

「不登校がバイトやるわけにはいかんでしょう」

「いいじゃん、バレなきゃ」

何となくキボウって女の子を思い出してきた。

こんな奴だった。

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雨上がりの空に 阿紋 @amon-1968

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