のり弁
「5年生の時に転校したので、それ以来、黄泉ちゃんには会ってません」
「そうか、まだ黄泉が平和な頃だね」
「えっ、何かあったんですか」
「ウチの父親は、僕の名前をコッキって読ませるぐらいだから」
「ちょっと変わってて」
「黄泉もひらがなで書いてるうちは良かったんだよ」
「読みだけなら、変わった名前でもなかったし」
「黄泉の国のことですか」
「黄泉ちゃんは好きだって言ってましたよ」
「別に、本人が好きだろうが嫌いだろうが関係ないんだよ」
僕は日暮の弁当を食べながら、日暮と話している。
「悪意を持って、黄泉を使う奴が多くなったんだよ」
「黄泉のまわりで」
「いじめられたんですか」
「いや、凶暴になった」
「でも、そんな感じじゃなかったような」
「自己防衛なんだろうね」
「格闘技を習い始めたり」
「ところで日暮、お前の弁当って、いつものり弁みたいな感じなんだが」
「そうなんですよ。基本、父と兄に合わせているので」
「あたしなんて、ついでなんです」
日暮は、僕がコンビニで買ってきたおにぎりを食べている。
「そういや、中学で弁当は変わってっるな」
「そうなんです。うちの学校、変わってるんです」
「母親は、それがショックで」
「でもさ、お前の学校って、昼休み外出OKなのか」
「一応ダメなんですけど、ノーチェックなんです」
「そうか、やっぱ変わってるな」
「日暮、今日のチキンカツは美味いぞ」
「そうですか」
「でも、いいです。食べてください」
「ゴメン、もう食べちゃったけどな」
日暮は、僕を見て笑っている。
「それはいいけど、そろそろ戻らなくていいのか」
「いいんです、実はあたしも不登校なんです」
「隠れ不登校ってやつか」
「でも、親に連絡行くだろう」
「連絡が行かない程度には行ってます」
「面白いな、お前」
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