バウンドの聖女
故に聖女は重宝され、護衛などは当たり前。
場合によっては監禁に近い状態になってしまうほどに過酷な運命を背負わされている。
また、生娘であれば神様のおつげである[信託]なるものを聞くことが可能であるらしい。
特に今の聖女は15歳という若さな上、現在の第三騎士団長以上の聖魔術の適性を持つという希代の天才らしい。
と言うより俺の同年代って希代の天才多くないか?。
そんな聖女様が、俺と一緒にいたアグラ・クラスティだったわけだ。
まあ確かにそんな大事な聖女様が護衛も無しに歩かれたら困るわな。
「というか君……もしかしてアグラが聖女ってことを知らなかったりしないか……?」
アルトによる鋭すぎる突っ込みが来てしまう。
「いや知ってましたけどね?知ってましたけどね?」
「さて聖女様、我々も可能な限り無理やりでというのは好みません」
「これ以上抵抗するのであれば、先ほどまであなたと共に楽しそうにしていたこの少女の身が危ないですよ?」
「ど……どうしてそれを!」
「はったりですが引っかかってくれましたね。では大人しくしてください。」
「ちょっと待ってくれ、聖女に好き勝手動き回られると困るってのは分かる」
「しかしそれは流石に無理やりすぎないか?」
「そんなものだ。君はそろそろ帰りたまえ。」
「流石にこれは横暴過ぎませんかね?これを見て見ぬ振りをするわけにもいきませんですから。」
「一市民に公務の説明をわざわざするとでも思うか?」
「生憎ですが俺は聖女様じゃなくて”アグラ・クラスティ”とお茶をした人間でね」
「きちんとした説明をしていただかないと、権利を盾に悪いことをしているような状況を見過ごすわけにはいかないんですよ。」
「君も言ったじゃないか。聖女様に好き勝手動き回られると困るんだよ。」
「だから!それにしても今のは無理やりじゃないですかと言っているんですよ!」
「話が平行線になって進まないな。では私はここで失礼する。」
「失礼するじゃない。ちょっと待とうか?」
するといきなり、いつの間にかカノンが近くに来ていた。
「確か体調が悪くて面会ができないだったか?それにしては1人で外出していて元気そうだったがなぁ?バランド近衛騎士殿?」
「聖女様はカノン殿が苦手なようでな。理由をつけて断っていたわけだ。」
「残念ながら俺は直接言われないと信じれない人間なんでな。一回だけでいいから面会するのも問題は無いだろう?」
「言っているだろう。聖女様は貴様と面会がしたくないのだ。」
「じゃあ貴方がロックと裏で繋がっているというのは、聖女様も同意しているということで問題は無いということか?」
「根も葉もない噂だろう。証拠はあるというのか?」
「証拠があるかって言う人間は大体やってんだよ。」
「つまり証拠が無いと……やはりまだ青いですな。」
「らちが飽かないな。」
「火の無い所に煙は立たない……でしたっけ?そういうものですよ。」
「まあいい。話はまた後でじっくりと聞かせてもらおうか」
「リーシェ。ここの問題は何とかするからお前は帰っておいてくれ。」
「ああ……分かった。」
状況があまり呑み込めないが、とりあえずカノンがバランドと敵対か何かをしてるようなので一旦いうことを聞いて帰ることにした。
今俺はアリシャとクリームと共に、俺が泊まっている宿に戻っている。
「ということがあったんだが、2人ともどういうことか分かるか?」
「アブラさんが実はアグラさんで……更に聖女だったというのは分かったけど国の内情とかは分からないかな。」
「うーん。自分もあんまり詳しくないので、現段階の情報をまとめるだけになりますけどいいですかね?」
「俺もあんまり詳しくないし問題ないと思う。」
「アグラさんは何者からか逃げていた、その状態でリーシェさんと会ってお茶をして屋茶亭に来た」
「席から立ったのが、バランドって人が来たときだったので恐らくはバランドの部下、またはその本人から逃げていたのでしょう」
「そしてその後捕まり、脅しの内容から察するに
「大体そんな感じだろう。」
つまりは俺と出会ったから捕まったというわけだ。
「一側面からの情報で断言するのは危ういですが、今の所の情報としては」
「聖女様に対して、バランドとその一味?が割と過激な方法によって拘束しようとした」
「そこでカノン先輩が登場し、バランドがカノン先輩と聖女様を会せないようにしていること。そしてバランドがロックと裏で繋がっているということを言ったと。」
「クリームも言ったけど……一側面からの情報だけで考えるのはあまりよくない。」
「カノンを信じたくはあるが、もしかしたら嘘をついているかも」
「嘘をついていなくても騙されているかもしれないしな。」
「じゃあここまで都合よく今のこちらの視点から得られる情報をまとめたところで」
「扉の前で入るか迷っている貴方。どうぞお入りください。」
クリームがそういうと、いきなり扉が開いた。
「気がついていたのか……。」
そこにはアルトがいた。
気配を消すのが上手いのか、俺が混乱していていたからかは不明だが扉にいたことを察せなかった。
いつも通りかわいらしさと上品さを両立した白を基本とした高級そうな服ではあるが、バランドに屋茶亭を紹介させられていた時以上に顔色は悪く体調が悪そうだ。
アルトは部屋に入り扉を閉めた後、いきなり土下座をした。
「頼む!アグラを救ってくれ!」
魔術師リーシェの英雄譚~異世界転生でチートを貰えなかった俺は異世界最強の魔術師を目指すことにした~ マシマシ太郎アンダーバー @Moshi_Tarou1
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