4次元ポケットにジュテーム

 ともかくね、アイツにどこでもドアを出されて、なんかおかしいな、と思いつつも、いち早く『ノルウェイの森』の世界に行きたかったんで、ドアを開けて入っちまったんだ。


 そしたらさ、お前、ホントの森じゃねーかと。しかも雪景色じゃねえかと。おいおいドラえもんて後ろ向いたら、どこでもドア消えてたよ、なぜか。吹雪で吹っ飛ばされたのかな?


 で、僕の伝え方が悪かったんだろうと思い、薄着だったけど優しい心で、どこか吹雪を凌げる穴倉を探し求めてたんだ。そしたら、森の中の道路に出てさ。でも、車なんか全然通っていないわけ。でも標識はあったのよ。看板もちょっと。それ見てたら、『ストックホルムまで70㎞』って書いてあって、どうやらここがスウェーデンだってことが分かった。


 このミスは許せなかったね。いくら伝え方悪くて、本当の森に連れていったとしても、僕は確かに〈ノルウェイ〉と言った。これは完全にミスだ。どこでもドアが僕を誤案内した! ひいてはその道具のオーナーたる、アイツのせいだ!


 しかし、僕には何もできない。ああ、熱っぽいし悪寒がする。全身が震える。目の前は真っ白。これは雪なのか、それとも何も見えてないせいなのか? 意識が遠のく。あれ、森、果てた?


 僕は今どこにいるのだ? でもそこがどこなのか僕には分からなかった。見当もつかなかった。いったいここはどこなんだ?


 あ、ここだけ、『ノルウェイの森』気分、味わえた……かも。最後の最後ね。やるじゃん、アイツ…………バタッ----ああ、冷たくて気持ちいいね。いや、『少しも寒くないわ♪』だね……


(了)

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スウェーデンの森 ひろみつ,hiromitsu @franz

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