第6話 まずすることと言えば…
勿論レベル上げだ。蘇生、回復魔法が存在しているか否か、使用できるパーティーがあるか否か、多分後者であるだろう。おそらくシエラはアタッカー、タンクの役割で優希先輩は後衛の援護&攻撃魔法主体のアタッカーだろう。すると俺は…
「残念ながら我々はケンタ様含めアタッカーしかおりませぬ、後衛のユウキ様も援護魔法と言えども人体強化魔法が得意で回復魔法は未習得でございます。回復魔法を習得するには適正があるか、ない方の場合、相当な鍛錬が必要とされています。」
シエラはガクリと残念そうな表情で答える。すると頼み綱は俺と契約しているあいつしかいないだろう。
「ゆーちゃん、得意魔法は?」
するとにこやかに答えた。
「端的に言えば全般やな!」
へ?
「何ゆーてんの?一応ウチはこの辺の精霊になら絶対負けへん自信あるわ。攻撃も回復も援護の魔法もお手のもんやで!ただな…」
哀れな目で俺を見る、何か言いづらそうな苦虫を噛み締めた表情だ。おそらく…
「俺が弱いから実力が出せない。とか?」
首を縦にも横にも振らず後ろを向いた。
「半分は正解や。否定はできん堪忍な。けどなもっと肝心なことがあんねや」
「肝心なこと?」
「宿主の魔力、あと実戦の経験から魔法はどんどん強くなるんや。実戦経験ほぼゼロの健ちゃんやから無理するとウチの魔力に呑まれて死んでまうんや。」
そうだよな、確かに低レベルで心強い仲間ができるのは頼もしいがそれ相応の対価が必要だ。強い武器、強力な防具には多額の金、強力な魔法、そして強力な精霊との契約にあたっての対価、それは宿主の魔力。
「なるほど、この世界に来て間もなく最強に近い精霊と契約したんだ。体に馴染んでない今、俺が無理にゆーちゃんの力を借りて魔法を無闇に使うと俺自身の命に関わる。そう言うことだな?」
「正解や、ウチと契約できるだけでもものすごい魔力と精神力が必要なんや。もしかしたら健ちゃんは何か特別な能力があるんやろか?」
そうなのだろうか?俺は初めて自分のステータスを拝見する。(5話参照)
俺の今のレベルは3、まぁ他の能力はたかが知れてる能力だな。でも待て、スキルはどうなってる?
シエラに教わった。
「これではないでしょうか?」
コピー、リフレクト、リアライズに負けずとも劣らないであろうスキルがあるのだう。
《アンリミデットコスト:精霊と契約する際、自身の能力は反映されない。》
要約すると契約するだけなら精霊と契約者の意思だけで契約できると言うことか。
「そっかー、えらいスキルもってんねやな健ちゃんは。やっぱ健ちゃんと契約してよかったわぁ」
嬉しそうにゆーちゃんが俺の肩をバシバシ叩きながら笑っている。にしてもえげつないスキルをもっていたんだな。そしてふと思い出した。
「そういえばシエラさん、二つ気になる疑問があるんだが」
「なんでしょう?」
シエラは首を横に傾ける。
「まず一つ、なぜ俺はこんなに能力に恵まれてあの場では何も起こらなかったんだ?そして無能力者扱いになってしまったんだ?」
ごくありきたりで当たり前な疑問だった。
「それは簡単です。ケンタ様の能力を隠す為ナオミチ様の計測をした直後にユウキ様がケンタ様に魔法を掛けていたのです。」
どういうことだ?
「私は無属性の時の精霊クロノスと契約しているのだけれどそのうちの魔法の一つ《シャットダウン》と言ってその名の通り健ちゃんの気配そのものを抹殺するようなものね。だから周りは健ちゃんの強さを全く何も感じ取れなかったの。この魔法は気配を消すので潜入捜査とかにぴったりの魔法ね。」
そうだったのか、謎が一つ解けた。もう一つは
「タイムトラベルで来たのは未来か過去どちらなんだ?」
すると優希は答える。
「2週間後よ、多分健ちゃんは死んだことになっているはず。」
「そして私達は謀反者としておそらく懸賞金が掛けられています。」
まぁ行動を見るなりそのようだな。それに王様は二手に分かれて行動するように言っていたみたいだが優希やシエラさんの裏切りによって二手には分かれず宮城、棚橋、そして愛菜の3人と王様が選んだ兵士達でパーティを組み行動していることだろう。
「これからどうするんだ、俺は自分を鍛えたいからこの辺りでレベル上げを…」
その時だった、殺気を感じ取ったのか俺はとっさに背後にリフレクトを貼った。すると鈍い音がして壁が崩れ去った。しかしなんとか攻撃は打ち消せていたみたいだ。後ろを見るとそれは5匹の大きなゴブリンがいるではないか。身長はだいたい2.5mくらいと言ったところか、建物の天井くらいの大きさだ。
「これはまずいですね、ブラックオーガと言ってゴブリン族の中でもかなりの強敵ぶりです。ステータスも1匹で私3人分くらいの強さです。」
おい、今なんつった?俺がレベル上げというよりあいつらが今日の飯の狩りに俺らを狩りに来たという方が自然なくらいの絶望感じゃないか。
「タイムストップ」
優希は時をブラックオーガ達の動きを止める。
「健ちゃん、タイムストップは相手の動きを止める強力な魔法なの、だから魔力もだいぶ消耗するから今の私が使えるのは1日3回くらい、だから一気に決めてね」
ウインクするな、それを横目にシエラは必殺技を繰り出す
「ケンタ様、今が好機です。一気に畳みかけましょう。奥義!アルテマソード!」
え、今なんつった?…アルテマソードだと!?地球の世界のゲームではほぼ最強にあたりそうなスキル名だ。それをシエラが?すると物凄い音が響き渡るブラックオーガの1匹が消滅した。
「さぁ、ケンタ様も私に続いてください」
「こうなったらヤケだ」
俺はさっきのアルテマソードをコピーして他のブラックオーガを倒していく、しかしやはりシエラの本家のアルテマソードには威力が劣る為2.3発入れないと倒せなかった。その間に残り1匹のところで優希の魔法の効果が切れたところであった。
「貴様らぁ、俺の仲間をよくもぉぉぉぉ!」
するとオーガが変身した。あれは…
「まずいですね、体格が倍ほどになりました。ああなったら私達は必ず攻撃を避けなければなりません。一撃でも食らったらひとたまりもないでしょう。」
そうだろうな、特に優希は何としても守らないと。そういえば俺のスキルには《リアライズ》があったな。想像しようこいつを一撃で葬れるような凄い武器を俺に…よし!強そうな漫画の必殺技を思い出せ。一撃で一瞬にして殲滅できるような必殺技、そうだ!アレを試してみよう。そして俺は想像した白い龍を身に纏う。
「小僧!そんな子供騙しで俺様に勝てると思うなよぉ〜!」
体格に似合わずブラックオーガは素早い攻撃を繰り出す。しかし俺は全て見切れてしまう。全ての攻撃を躱すとそのうちの1発が後方にある岩に当たった。
ズドーンと当たった岩は粉のように砕けたり跡形もなくなる。あの一撃を喰らえば一溜りも無い。この白龍のお陰でスピードが増したんだろう。
「ブラックオーガ、ステータスはどうなってるのかしら」
優希はサーチでステータスを覗く
Lv 120
HP 3000
MP 20
攻 2000
防 300
速 150
魔 50
魅 50
運 230
耐性 闇
弱点 光
「なんて攻撃力、一撃も喰らってはダメよ健ちゃん」
「了解、さて俺もやられてるわけにはいかないので行かせていただきますか。」
唖然としているシエラ。
「こ、これは!」
「てめーはここでくたばれ!白龍衝撃波!!」
身に纏っていた白い龍がブラックオーガを襲う。
「そんな子供騙しの火属性攻撃なんぞ!」
この瞬間俺は勝利を確信した。
「お前バカ?それは燃え盛る炎じゃねーよ。炎のように燃え滾った正真正銘の光属性攻撃だよ」
馬鹿みたいに突っ込んできたので避けようとしてももう遅い、白龍の餌食だ。
「な、なにぃー!うぎゃあああああああああああ!」
すると白い龍は跡形もなくブラックオーガを包み込み天に消えていった。
俺はレベルに似合わない相手の敵に打ち勝ったのである。
俺のステータスはどうなっている?
Lv 33
HP 650
MP 500
攻 525
防 406
速 467
魔 322
魅 354
運 105
耐性 全属性
大量にレベルが上がるのは結構なことだが運の伸び悪く無いか?そしてあんなバケモン相手にこのステータスでも太刀打ちできないんじゃ無いのか?
「ケンタ様が見に纏っていた白龍、あの時のステータスがこちらです。」
Lv???
HP???
MP???
攻 2000
防 2000
速 3000
魔 1500
魅力 1000
運 50
耐性 全属性
「やっぱり運は悪いのな」
俺はどの優れた能力よりもどれだけ強化しても変わらない自分の運の悪さに目が行った。
「それよりケンタ様、あれだけの力を使って何とも無いのですか?」
「いや、ちょっと目眩がしただけ。」
すると身体に負担がかかっているのはゆーちゃんか?
「おいゆーちゃん」
すると微かな声で反応する
「ごめん、ちょっと眠いから寝かせてやー」
もしかするとこの強力な力を使うと俺ではなくゆーちゃんに影響するのかもしれない。
シエラのステータス
Lv48
HP 736
MP 462
攻 760
防 508
速 620
魔 523
魅 666
運 512
耐性 風、光、闇
弱点 土
優希のステータス
Lv36
HP 549
MP 1005
攻 251
防 344
速 462
魔 873
魅 822
運 360
耐性 火、風、土、光、闇
弱点 水
精霊王に選ばれし剣士〜どん底でも成り上がってみせましょう〜 なっとー @710tabero
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