第116話 Side:ネガン・スソード
タバレ大佐のユニークスキル。
それは物理的な攻撃であればどんな攻撃でも『受け流す』ことが出来るというスキルだ。
「おっと、君たちの相手は私だぞ」
私は隙を突いてタバレ大佐に向けて魔法使いが放ったファイヤーボールを横凪の一閃で虚空へ散らした。
先ほども言った通り大佐のスキルはあくまで物理特化。
しかも『受け流す』だけである。
なので魔法攻撃にはめっぽう弱い。
そしてそのことを知っているのは私とエルダネスだけだ。
「一対一の戦いに横から茶々を入れるのはマナー違反じゃないかい?」
「五月蠅いっ! 勝てば良いのよ勝てば!」
たしかマイナとかいう女スカウトが叫びながらまたも私に斬りかかってきた。
「そんな考えでは私には勝てないさ」
私はその剣を軽く弾くと返す刀で太ももを深く切り裂く。
「ぎゃあああああああああああああっ」
響き渡る絶叫の後ろで、魔法使いの男が今度は
それは私がマイナの足を切り裂いていなければ彼女ごと焼き付くす軌道で。
「そうか。君たちは全員がそういう考えなんだな」
私は迫り来る炎に向けて剣を構え――
「こんなものは効かないとさっき見せてあげたというのに」
刀身に魔力を流し込みながら切り上げるように剣を振るう。
「馬鹿なっ!! 今度は完璧なファイヤーボールだったはずだ!!」
男の驚愕の声に俺はなんら反応も返さず一気に間合いを詰める。
そして剣を勢いそのまま男の腕に振り下ろし、新たな叫び声を生み出す。
「さて、あと二人」
先ほど蹴りを食らわせた斧戦士はよほど当たり所が悪かったのか未だに腹を押さえたままだったが、それでも斧を握って立ち上がろうとしている。
片や回復役の女術士は近くで魔法使いが腕を切り飛ばされたことに恐怖して腰を抜かし既に戦意を喪失しているようだ。
「君はどうする?」
私は女術者に優しくそう問いかける。
「わ、私はまだ死にたくないっ」
「だったらそこから動かず、何もしないことだな。もし何かしようとしたらそのときは」
「は、はいぃいぃっ何もしませんっっ」
「良い子だ」
そう言い残し、私は背後を振り返る。
そこには斧を両手で握り直し、私に向かって突撃する準備が完了した大男の姿があった。
「あのまま寝ていた方が痛い思いをしなくてすんだだろうに」
「うるせぇぇぇぇ!! 死ねぇぇぇぇぇ!」
我ながら安い挑発だとは思う。
しかしながら既に頭に完全に血が上っていた男には効果てきめんである。
「はっ」
気合いと共に飛び散る血と内臓。
私は斧を大きく振りかぶり突撃してくる隙だらけの男の胴体を、向かってくる相手の勢いを利用して切り裂いたのだ。
声にならない声を僅かばかりの間上げて、男はしばらく体を
「少しやり過ぎたか。とは言ってもここまでのことをした以上はどうせ処刑は免れないが」
むしろ死ぬまで牢で怯える必要が無いだけでも慈悲だろう。
私は心の中で申し訳程度の祈りを捧げながら刃先に付いた血糊を一振りで払うとネガン大佐の戦いに目を向けた。
ゴブリンテイマー ~最弱種『ゴブリン』しかテイム出来ない外れスキルだと言われたけど、実は最強のテイマースキルでした~ 長尾隆生 @takakun
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