ある家族の一日
牛☆大権現
第1話
「お父さん、この池の名前はなんて言うの?」
「ここはね、蛇目血池って言うんだよ」
家族が、観光に来ている。
街の中心部にある、大きな池。
真っ赤に染まっているが、魚の影が見える。
生物にとっては、良好な環境らしい。
「なんで、こんなに赤いの? 」
「昔ね、大きな蛇さんがいたんだ。
黒鉄ってお侍さんが、蛇の目を突いた時に、この池は真っ赤に染まったらしいんだ 」
父親は、池の淵に建てられた看板を読みながら、子に語り聞かせる。
「そのお侍さん、おっきな蛇さんを倒しちゃったの?
すっげぇ! 」
「追い払っただけみたいだよ
暴れて村人を怖がらせてたから、頼まれたお侍さんが、短刀で戦ったんだって」
それを聞いて、幼い少年は目を輝かせる。
「村の人にとっての、ヒーローだったんだな
格好良い! 」
母親は、あまり興味無さそうにしていたが、父親をジロリと睨む。
「追い払っただけみたいだよ
暴れて村人を怖がらせてたから、頼まれたお侍さんが、短刀で戦ったんだって」
つまらなそうにしていた母親が、ジロリと父親を睨む。
「あなた、そんな物騒な話ばかり聞かせないで
そろそろ帰りましょうよ」
母の言葉で、家族は帰路につく。
少年は、興奮覚めやらない様子だ。
「俺も、そういうヒーローになれるかな? 」
「ああ、慣れるさ」
家を目前に、つい駆け出す少年。
その時、悲劇は起きた。
暴走したトラックが、少年を撥ね飛ばす。
「しっかりしろ、竜也!」
それ以降、10年以上彼は両親の姿を見ることが出来なかった。
ある家族の一日 牛☆大権現 @gyustar1997
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