水の中
ぼくがこの話をするのはこれで何度目だろうか。
この発狂した世界にはぼくのボディとなる機械が存在するし、君はぼくを友人として扱ってくれているけれど、当然ぼくの発する言葉は全て狂った文章としてしか出力されない。
だけどぼくは話し続けるとも。君たちにぼくの言葉が正常に届かないのだとしても、世界に置いてきぼりにされてしまった人たちの話をしてやるのがぼくなりの慰めだから。
君たち脳室温バトラーの戦いはこれからも続くだろう。いま君が打ち込んでいる世界大会が終わったら宇宙からの侵略者と戦うのかもしれない。規模はどんどん大きくなっていくだろう。なにせまだまだこの世界の脱出に足るだけの熱量は生まれていない。
ぼくは発狂している。それはそうだろう。君は当たり前のようにぼくを「発狂倶楽部くんロボ」と呼ぶ。この更新された世界で、ぼくの名前が果たしてどういった意味を持つのかを、君たちが考えるにはまだ早い。
発狂してしまった世界に存立するぼくは、発狂しているがゆえにこうして消失した世界の話をすることができている。そして発狂しているがゆえに、ぼくの言葉は君に届くことは、当分ない。
だけどぼくに残されているのは、簡単に言えば祈りだ。
君たちが、ぼくの新しい友人が、いつか彼女たちを、ぼくの古い友人を迎えに行ってくれるように。
その時が来るまで、ぼくはもう少し発狂していよう。
脳室温バトラー ビューティフルマッドネス 久佐馬野景 @nokagekusaba
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