運命の出会い-ロバート・マクレーンに捧ぐ-

 ハイスクールを卒業したロバートはマニマール州から400kmも離れた場所にあるミシラミア州に移り住むことにした。ロバートがミシラミアという地を選択したのには2つ理由があった。

 1つは、マニマールから遠く離れているということ。

「実家からあまり近い場所に住んでは、きっとすぐに弱音を吐いて、あの干し草だらけのつまらない土地に戻っていっちまう。そう思ってできるだけ遠くを選んだんだ。結果として、その選択は正解だったよ。まあ、今ではマニマールも嫌いじゃないけどな」

 ロバートは後にそう語っていた。

 そしてもう一つは、ロバートの兄の友人である、ビル・エヴァンスがその土地に住んでいたということである。

 ビルは大学に在学中に小説家として鮮烈なデビューを果たした。デビュー作は『薬・酒・煙草』というタイトルで、内容もタイトルどおりでひたすらドラッグと酒と煙草で破滅的な生活を送る話だった。いかにもロバートの兄の友人というような作品だった。しかし、ビル本人はいたって真面目な人間だった。『薬・酒・煙草』の印税で大金が手に入っても大学を辞めることはなく、大学院に進むことも検討していたくらいだ。

 そして、『薬・酒・煙草』のモデルとなった人物は他でもない、ロバート・マクレーンだった。大学の悪友だったロバートの兄ジェイムス・マクレーンは、ビルにいつも弟の話をしていた。悪ガキだが見込みのある男だとも語っていたらしい。ジェイムスがビルに話したロバートの人物像はその悪ガキ加減を少しばかり誇張されていた。ビルはジェイムスの弟の話に大いに興味を持ち、その話を更に誇張して書いたのが『薬・酒・煙草』だった。

 そして、ビルが一度もあったことのないロバートに興味を持ち、ハイスクールを卒業したらミシラミアに来るよう誘ったのである。


 小説家ビル・エヴァンスと悪童ロバート・マクレーンの出会いはまさに運命的な出会いだった。ビル・エヴァンスの力なしでは、ロバートがラスタ―ニャ独立の父と呼ばれることはなかっただろう。 

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エチュード 千川 @toki109

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