第5話 改変
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「...う」
妙に長い夢から目が覚めるとそこは白い部屋だった。
白い天井。白いベッド。
瞬時に病室だと悟った。
「...クソ...」
体を起き上がらせるが、身体が重い。
頭も未だに痛い。
ズキンズキンと痛む。
周りを見渡すが、寝床以外には窓とテレビと時計ぐらいしか無かった。
リトルスター。
地震。
俺だけに起こる頭痛。
何か関係があるに違いない。
前にカリスが言っていた『現実改変』の影響だろうか...。
というよりどうしてカリスは『現実改変』なんて聞き覚え皆無な単語を知っていたんだ?。
ネットで調べたのか...?。
そんな事を考えている時だった。
足音がした。
ブーツの足音。
みやこが見舞いに来たのか。
アイツはやっぱり優しいな...。
...いや、みやこはそもそもブーツは履いてこないな。
晴はスニーカーだろ...?。
海斗はそもそも来なさそうだし...。
誰だ?
その時、ゆっくりと病室の扉が開く。
その扉の向こうにいたのは、みやこでも晴でもなく。
そう。とても見覚えがある。
「...ぇ」
少女。
白髪ロング。
「あ、気がついたんですね!」
赤目。
「ホントに心配したんですから...」
その風体や顔つき。
「メンバーの皆もお見舞いに来てましたよ」
それはまさに。
「...カリス...?」
彼女だった。
俺は思わず、ベッドからガタッと立ち上がってしまった。
全身の血の気が引いていくのがわかる。
何故なら、今目の前に居るのは、
『AIのはずのカリス』
だから...人間として、存在するはずが...
「え、大丈夫ですか...?」
カリスは不審な挙動をする俺に心配げな声で話しかける。
やめろ。
お前がカリスな訳が...ない...
ふと、思い出す。
あの時の、カリスの『願い事』
<人間の身体が欲しい...じゃダメかしら...?>
俺は察した。
俺は理解した。
俺は...
とんでもない事をしてしまったのではないか。
しばらくして落ち着いた...とはいえ動悸が未だに激しいが、とりあえず色々カリスに聞いてみることにする。
「な、なぁ...」
「ん?どうしました?」
カリスは、俺の使っているベッドのすぐ横の椅子に座っている。
「リトルスターって今はどうなってるんだ?」
恐らくだが、今回の書き込みも俺の書いた...ということにはなっていないのだろう。
だが、今回に限り『カリス』という個人名が書き込みに入っている。
カリスはどんな反応を見せるんだ...。
そんな事を考えていると、カリスはきょとんとした。
しばらくして、ハッとした感じで言った。
「アレですよね!巷で話題のやつ!まだ場所が分かってないですけど...」
やっぱり覚えてな...
...待て。
「お、おい」
「?」
ちょっと待てよ。
「お前今、『場所が分かってない』って言ったか?」
そんなはずは...。
するとカリスは
「当たり前じゃないですか~。ネットではみんなが血眼になって探してますよ」
と、さも当然のように答えた。
困惑。
なんで?
俺は確かにカリスが見つけてきたリトルスターに...
あれ?
「じゃ、じゃあ地震は!?」
「そうですよ、地震!。ホントに大きかったんですよ」
そう言うとカリスは俺の携帯でニュース画面を映した。
2人のコメンテーターが話していた。
「そうなんですよぉ、まだ3日前に発生したアキバ大型地震ですが、未だに原因も分かっておらず復興の目処も経っていないようなんです」
「ライク博士によると、震度5強で範囲は秋葉原限定で前兆もなし。そして死傷者68人なんて言うのはどう考えても異常らしいっすよ」
「似たような例も無いと聞きますしねぇ...」
「あながち『人工地震』かも...。いや、コレは阿呆らしいですな(笑)」
「なかなか良い線行ってるかもですよ~。憶測ですけど」
「頑張って原因を突き止めて欲しいですなぁ」
「明日にはもう少しわかってそうですが...どう思います?」
「苦節を乗り越えなければ、真実には辿り着かんとは思いますね...」
震度5強...?
死傷者68人...?
秋葉原限定...?
人工地震とかライク博士だとかはよく知らんが...
なんだかゾクッとする。
不意にみんなの事が心配になった、
「み、みんなは...」
「あぁ〜大丈夫ですよ!ついでに斗哉さんの家も無事です!」
良かった...。
が、コレは...。
どう考えてもリトルスター関連だ...。
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しばらくすると、先生に呼ばれた。
意識を失う原因の頭痛に関しては原因が分からなかったので、また症状が出たら急いで頼って欲しいと言われた。
その日の夕方には、外に出れた。
夕陽が降り注ぐ。黄昏時。
「大事に至らなくて良かったです...」
カリスはホッとしたようだ。
だが、俺はカリスと会ってから胸騒ぎがしっぱなしで潰れそうだ。
カリスの願いが実現した事実。
そして、ほかにも書き込んだ2つの願い。
嫌な予感がする。
そんな時に、ふと、空が見たくなった。
見上げた。
綺麗な空だ。
「...綺麗ですね」
そうだな...。
そんな時だった。
「...ぁ...」
急に視界が歪んだ。
歪む。
歪む。
そして、
空に、
深淵の、
穴が...
「...ぁれ」
あいたように見えたが気のせいだった。
疲れてるんだろうな。
「大丈夫ですか?」
カリスが心配そうに見つめる。
「大丈夫だ。問題ない」
「明日にみんな集合する予定なので、家に着いたらゆっくり休みましょう...」
俺とカリスは、歩みを進めた。
そんな時、言葉が聞こえた気がした。
そこら辺の女子高生とかでも言ってたのだろうか。
こんな言葉だった。
『そらにあながあく』
なんてことない言葉。
だけど、その『言い方』が少し気になった。
無気力というか、何の感情もこもってないというか...。
そして、俺にはその言葉がとても、脳裏に焼き付いたように思えた。
というより、『聞き覚え』があるような...。
なんだろう。
モヤモヤが残ったまま、俺はふらつきながら自宅へ向かった...。
✝︎カオス・ワールド✝︎ タヌキ大臣 @monimoni3
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