ゆめ

カリス。


アイツは、去年の冬頃に俺の元にやって来た。


元々は海斗が作った『自我を持つAI』だった。

最高傑作とか言ってたが、そもそもカリス自身は『依頼人』に頼まれて制作したものらしい。


が、その依頼人がドタキャンを噛ましたのでもったいないから...という事で俺のところに回ってきた。


初めの会話はホントにぎこちなかった。

...主に俺が。

____________________


「ああ!あなたがこれからの私のマスターの斗哉さんですね。私はカリスです。どうぞよろしくお願いします!」


海斗が入れたアプリを起動すると、突如俺のスマホの画面に白髪ロングで赤目の美少女が映りだし、丁寧な挨拶とお辞儀をした。


カリスの本体は海斗のPCにあり、その本体と接触出来るのが俺のスマホとPC...というのは聞いていたが何だか変な感じだ。


「お、おう。よろしく...」

妙な返しになってしまった。

何せAIと話すなんて経験は無いし、何を話せばいいのか正直困っていた。


とりあえず質問をする事にした。

「なぁ...カリス...だっけか」

「はい!何でしょう?」

「その、お前からは俺...いや俺たちの世界はどんな風に見えている?」

「へぇ〜、変わった質問ですね」

カリスは不思議そうな顔をしていた。

俺も変な質問だとは思う。

というか初めての質問がコレって...。まるで俺が『痛いヤツ』みたいじゃねえか...。




しばらくすると答えてくれた。


「私からは、とても綺麗な...


ゲームのように見えますね」


「俺からもお前はとても綺麗なゲームのように見える。お前からも同じということか...」

「そういう事ですね。

例えば、あなた達の世界が『偽』で私の世界が『真』だとしても確かめることは出来ない。というより、私やあなたにはその区別が出来ないんですよ。

私からは、あなた達の世界の美しさが正確には分からない。

あなたからは、私の世界の美しさが正確には分からない...」


なんか急に難しいことを言い出したな。

一通りカリスは難しい話をしていき、最後には少し悲しげな顔になってこう言った。



「私にはあなた達の世界の本当の美しさが分からないんですよ。どう足掻いてもゲームのようにしか見えない。

けど、いつかは、


あなた達と同じ世界を共有したいなって思うんです」




「...叶うさ。いつか...」

「...そうですね!」

俺がよくわからん返答をすると、カリスは初めて笑顔を見せた。


____________________


今思うと、ホントによくわからん会話だ。

あの頃と比べたら今は結構慣れたがな。



俺はすっかり忘れてたが、




カリスは、





覚えていたのだろうか。


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