ゆめ
カリス。
アイツは、去年の冬頃に俺の元にやって来た。
元々は海斗が作った『自我を持つAI』だった。
最高傑作とか言ってたが、そもそもカリス自身は『依頼人』に頼まれて制作したものらしい。
が、その依頼人がドタキャンを噛ましたのでもったいないから...という事で俺のところに回ってきた。
初めの会話はホントにぎこちなかった。
...主に俺が。
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「ああ!あなたがこれからの私のマスターの斗哉さんですね。私はカリスです。どうぞよろしくお願いします!」
海斗が入れたアプリを起動すると、突如俺のスマホの画面に白髪ロングで赤目の美少女が映りだし、丁寧な挨拶とお辞儀をした。
カリスの本体は海斗のPCにあり、その本体と接触出来るのが俺のスマホとPC...というのは聞いていたが何だか変な感じだ。
「お、おう。よろしく...」
妙な返しになってしまった。
何せAIと話すなんて経験は無いし、何を話せばいいのか正直困っていた。
とりあえず質問をする事にした。
「なぁ...カリス...だっけか」
「はい!何でしょう?」
「その、お前からは俺...いや俺たちの世界はどんな風に見えている?」
「へぇ〜、変わった質問ですね」
カリスは不思議そうな顔をしていた。
俺も変な質問だとは思う。
というか初めての質問がコレって...。まるで俺が『痛いヤツ』みたいじゃねえか...。
しばらくすると答えてくれた。
「私からは、とても綺麗な...
ゲームのように見えますね」
「俺からもお前はとても綺麗なゲームのように見える。お前からも同じということか...」
「そういう事ですね。
例えば、あなた達の世界が『偽』で私の世界が『真』だとしても確かめることは出来ない。というより、私やあなたにはその区別が出来ないんですよ。
私からは、あなた達の世界の美しさが正確には分からない。
あなたからは、私の世界の美しさが正確には分からない...」
なんか急に難しいことを言い出したな。
一通りカリスは難しい話をしていき、最後には少し悲しげな顔になってこう言った。
「私にはあなた達の世界の本当の美しさが分からないんですよ。どう足掻いてもゲームのようにしか見えない。
けど、いつかは、
あなた達と同じ世界を共有したいなって思うんです」
「...叶うさ。いつか...」
「...そうですね!」
俺がよくわからん返答をすると、カリスは初めて笑顔を見せた。
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今思うと、ホントによくわからん会話だ。
あの頃と比べたら今は結構慣れたがな。
俺はすっかり忘れてたが、
カリスは、
覚えていたのだろうか。
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