第17話 情報収集 ~お昼の作戦会議終了と妖精たちの噂~

「……何か、お話が大きくなってきましたね」

『そうだったミド! 話を纏めると、3人と初めて会った時にも言ったけど、皆んなが変身できるのはにじのくじらの力なんだミド!』


 立ち直ったミドルンがテコテコと3人の前までやって来て、えっへんと胸を張る。


「そういえば、そんな事も聞いたような気がします」

『この町に眠っているにじのくじらが、この町の人々に力を与えているんだミド』

「それじゃあなおさら、負けるワケにはいきませんね」

『そうミド! この町は皆んないい人たちばっかりミド! 誰かが守らないといけないミド』


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながらしずくたちにアピールするミドルンだったが、そこでまたルチルの目が猫のように光る。


「……ホントに何か隠してない?」


 いかに温厚と言えどルチルに何度も疑われたミドルンは、堪忍袋の緒がついに切れた。

 ミドルンは一際高くジャンプすると、ルチルの額に頭突きを喰らわす。


「いたぁいっ!」

『疑いすぎミド! 騙そうだなんてこれっぽっちもしてないミド!』

「ごめんって~、からかい過ぎたよぉ」


 からかい過ぎたとおでこを撫でながら反省するルチルの前に、しずくが割って入る。


「まぁまぁ二人とも。けどミドルンみたいな愛くるしいマスコットキャラが、実は黒幕だったみたいな話も最近は多いですから」

『何言ってるミド! ミドルンが裏切るワケないミド!』

 

 未だに腹を立てているミドルンは二人を指差しながら頬を膨らます。いつもとは全く違う気迫に押され、しずくは苦笑しながら頷く。


「そ、そうですね。ミドルンが裏切るなんて、絶対ないですよね」

「そうですわね。ミドルンが裏切るなんて、あり得ませんわ」

『ようやく信じてくれたミド!? ミドルンは何度生まれ変わっても、皆んなの事を裏切るワケないミド!』


 やっと分かってくれたかと腕を組んだミドルンは大きく息を吐く。


「そうですね。ミドルンは、人を裏切ったりなんか、絶対にしないと思います。どの世界でもミドルンはミドルンです。ですよね?」

『うんっ! その通りミド!』


 屈託のない笑みで返すしずくに、ミドルンは満足げに頷いた。


「では残された課題は……」


 るりが手帳に書き込みを入れ、妖精たちから得た情報まとめていく。


「“にじのうつわ”ですわね。では放課後、私の家に集まって“にじのうつわ”について調べてみるというのは、如何かしら」

「さんせーさんせー!」

「分かりました。けど、一旦買い物をして家に戻ってからでもいいでしょうか」


 ルチルが元気よく手を振りながらるりの提案に賛成するが、買い物当番だったのを思い出したしずくは、申し訳なさそうに挙手をした。


「大丈夫ですわ。それなら、しずくの家に迎えの車を出しますわ。善は急げと言いますし、一刻も早くプリズムガールとして、この事件を皆んなで解決しないといけないですわ」


 それを聞いて一瞬固まるが、るりの好意を無下にできないと思ったしずくは少し困ったように笑うだけだった。


「大丈夫だよ! しずくちゃんが買い物してる間に、あたしたちがチャチャッと調べちゃうから!」


 ルチルが意気軒昂にサムズアップするが、その言葉に2人の目が鋭く光った。


「放課後ルチルさんは!」

「路乃部先生の病院に行く約束ですわ!」

「ふ、ふえぇ~!」


 もう今朝の約束を忘れたのかと二人に同時に怒られ、ルチルは立つ瀬がなかった。



『……ねぇねぇ知ってる?』


 ルチルのいなくなった後、アテネの森で妖精たちが口々に囁き合う。


『最近はティタニア様だけじゃなく、オベイロン様のニセモノもいるらしいよ?』

『え~? そうなの!?』

『知らなかった~』

『けどそのニセモノは、使徒ティタニアのような新参者じゃないんだって』

『ふ~ん……じゃあどんな奴? ペインとは違うの?』

『それはねぇ……』


 勿体ぶるように、妖精は声を潜めて噂を口にする。


『なんと最古参! しかも虚無の女王の側近中の側近らしいよ!』

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にじのくじら √ティルナノーグ ライチ @raichi142

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