第8話 あうとぶれいく 3

村の薬師の所へと戻った俺は直ぐに調合に必要な情報を説明しながら薬作りに足りなかった薬草を渡していった。


「そうですか、この薬草が足りなかったのですね。

私の勉強不足です。村の人達になんと言ってお詫びすれば良いのでしょう」


「今はそれよりも調合を済ませて患者に与えていこう」


「はい。そうですね」


翌日の昼頃には薬師達の頑張りによって村人達人数分の薬が完成していた。


その日のうちに重篤の患者から順に薬を服用させて、五日後にはこの村で床に伏せる者は居なくなった。


「ナッツさん、なんとお礼を申し上げて良いのかありがとうございました」


「いや、気にしないでくれ。こちらも宿で寝泊まりする事が出来たから」


治療を手伝う為にこの村で15日ほど過ごしたが、無事に村の人々に平穏が戻った事が自分にとっても嬉しいことだった。


◇◇◇◇◇


そして、ひと月半後…

当初の予定より日数は掛かったが、俺は新たなダンジョン都市へと無事に到着した。


◇◇◇◇◇


「査定と買取を頼むよ」


声を掛けながら、俺はハンターカードを添えて満杯のドラムバッグを買取窓口のカウンターの上に乗せる。


「ナッツさん、今日も大漁ですね」


受付窓口の女性がにこやかな笑顔で声を掛けくる。


「食事をしてくるから、よろしくな」


「はい。いってらっしゃい」


受付嬢に査定を任せると俺は組合近くの食堂で夕食をとりながら今後の方針を考えていた。

すると夕闇が迫る中、街の東側防壁上にある監視塔から緊急を知らせる鐘がなり始めた。


「しょうがない食事の途中だが組合に戻るとするか」


急いで会計を済ませ足早に組合へと向い俺が建物の中に入ると、中では組合の職員達が慌ただしく作業に追われているところだった。


しばらくして…


「名前を呼ばれたハンターの方々は会議室の方へお越しください」


この街に来てまだ日が浅い俺は呼ばれないと思っていたのだが…


「ナッツさんも参加して下さいね」


そんな言葉がいつも対応してくれている受付嬢から聞こえるのだった。

その受付嬢に…


「俺はこの街に来てまだ日が浅いのだが」


そう俺が答えると、受付嬢が傍までやって来て…


「だめで~す。前の組合での実績は報告が来てますから、諦めて下さい」


どうやら組合の間では情報の共有化というものが既に出来ていたようだ。

俺の傍でにこやかに笑う受付嬢に俺は両手を挙げて降参の意を示すと、あきらめ顔をしたまま会議室へと向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トレジャーハンター ~唯一のアイテムを探して~ あんドーナツ @ando_natu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ