第7話 あうとぶれいく 2
挨拶を済ませると、俺は直ぐに治療師の女性と共に薬師の居る所へと急いだ。
「こちらです」
女性に案内された場所、そこは薬を調合する為の機材が揃っている部屋で、そこでは数人の薬師が忙しく働いていた。
「何か問題が起きましたか?」
その中の一人の女性が俺達に気付いて声を掛けてきた。
「この方、ナッツさんが薬草とポーションを譲って下さるそうなの」
「そうですか!ありがとうございます」
ここでは簡単な挨拶を済ませ、俺は薬師の女性から指定された場所に今回必要な分量の薬草を出していく。
「ありがとうございます。これだけあれば充分に足りると思います」
ある程度薬草を出したところで薬師の女性からストップが掛かる。
「後、ポーション類はどうしますか?」
俺の問いかけに……。
「そうですね…。解毒と解熱のポーション類が有ればお願いしたいのですが」
「そういえば、いま治療中の村人は何人くらいですか?」
「今は多分30人くらいだと思います」
300人規模の村で30人も居るとあっという間で全員が罹患してしまうだろう。
「では、とりあえず解毒と解熱のポーションを100本ずつこちらに出しておきますね」
「えっ!そんなに、いいんですか?」
「村の規模から考えるとここ2日が正念場でしょうからこれらが助けになれば」
「ありがとうございます」
と、目元に微かな涙を浮かべながら薬師の女性は感謝の気持を伝えて来た。
薬師の女性は直ぐに調薬の作業に入るようなので俺は治療師の女性とその場を離れて村人が寝かされている場所へと戻った。
「この病の元は分かっているのですか?」
俺が治療師の女性に尋ねると……。
「森の中で狩猟をしていた猟師の男性が最初の罹患者です。
それからその家族へと移り、そして村中へと拡散したようです」
話の内容から致死性の強いものでは無いようだが。
「ただ、薬が効きにくい病のようで困っています。
最初に罹患した猟師の男性と家族は、もって後三日という処でしょうか」
「狩猟の際中に何か問題が起きたんですね」
「私が猟師の男性から聞いた話だと、ピグミィマーモという小さいお猿さんに指先を嚙まれたということでした」
俺はその話を聞いて、野生動物から嚙まれたことによる感染症だと理解した。
ウルフ系の動物で無かったことが幸いだった。
こちらは発狂する類のものだから手の負えなかった可能性が高い。
翌日、俺はピグミィマーモを探して猟師の男性が猟に出掛けた森へと来ていた。
「この辺かな」
目的の場所へと到着した俺はピグミィマーモを捕獲する為に、鬱蒼と下草が生えている場所を選んで探索を始めた。
ピグミィマーモを捕獲する理由、それは保有している病原菌を確認する為だ。
俺の解析魔法なら詳細な結果を得ることが出来るだろう。
一時間後、無事にピグミィマーモを捕獲してその唾液を採集して解析したところ、薬草が一種類足りない事が分かった。
近場で入手可能な薬草だったので、俺は急いでそれを必要な量を採集すると急いで村の薬師の所へと戻るのだった。
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