第6話 あうとぶれいく 1

素材屋で換金した俺はその金を使って食材の補充を済ませると、二日後にはつぎの街に向けて出発した。


急ぐ旅ではないのだが、俺は何となく一つの所に長居しないほうが良い気がしていたからだ。



「さてお日様も真上に来たことだし、ここいらでそろそろ昼飯にしようかな」


俺は峠から見える景色の良い場所を視界に捉えたので早速休憩を取る事にした。


街道から少しそれ、程よく離れた場所に生えている大木の後ろ側に回り込むと目的の場所へと短距離転移ジャンプした。


「お~、予想した通りの絶景スポットだな。

もっと早くにこういう旅に出られたら良かったんだがな。

なかなか人生とは上手くいかないものだな」


小一時間ほど絶景を堪能しながら腹ごしらえの昼食と休息を取った俺は再び大木の後ろ側へとジャンプすると街道まで戻り次の街に向けて再び歩き始めた。


◇◇◇◇◇


「おい素材屋の旦那、この素材を売りに来た奴を教えてくれよ」


「ダメだ、ダメだ」


「こんな良い素材を持って来れる奴なんて、この街には早々居ないんだよ。

もう少し量が欲しんだ、なんとか頼むよ!」


「残念だがもうこの街には居ないと思うぞ、旅の途中だと言っていたからな」


「そんな~」


いつも俺の所に素材を買いに来てくれる此奴には悪いが個人情報は明かせねぇな。

ナッツだったか、俺もアイツが売る為の素材を目の前に出した時にその品質の高さには驚いたものさ、だから色を付けて買い取ったんだ。

また良い素材を売ってもらうには秘密にしておかないとな。

これは、商売人の鉄則だ。


◇◇◇◇◇


街道を歩くこと三日、俺は宿がある村へとやって来た。


関所のような造りの入口で門番に声を掛ける。


「済みません。泊まれる宿があると聞いて来たのですが」


「旅人さんか。有るにはあるが次の村に向かった方がいい」


何か問題があるらしく、返答に歯切れが悪いので俺は事情を聞いてみる事にした。


「何かあったんですか?」


すると門番は小声で俺に事情を説明してくれた。


どうやらこの村で疫病が流行り始めたらしく、村の治療師が頑張っているが薬草類やポーション類が足りなくなってきているらしい。それで旅人には次の村に向かうように説明をしているとのことだった。


そんな事情を俺は門番から聴くと、それなら薬草類やポーション類の手持ちが沢山あるので村の治療師の所へ案内してくないかとその門番に頼んでみた。


「あんた、それらの手持ちが沢山あるのか。それなら、こっちだ着いてきてくれ」


俺はその門番に促され、急いで治療師の所へと向かった。


俺たちがその場所へ到着すると、そこは野戦病院の如く木の床に寝かされた村人達の変わり果てた姿だった。


俺が患者に近付いて確認すると、見えている部分の肌には、赤い斑点の者もいれば黒い斑点の者もいた。


と…そこへ、この場で治療の為の指揮をしている治療師の女性が足早にやって来た。


「門番さん、そちらの方は……?」


声を掛けられた門番さんが、俺のことを治療師の女性に事情説明していく。


「そう言うですか」


事情を聴き終えた女性は俺の方へと視線を向けると。


「援助して頂けるとのことで、ありがとうございます」


と感謝の礼を述べてきた。

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