11 誰かの人影

 誰かの人影


 また、あの夢を見た。


 あの、広大な、大きな空の中にある白い雲の渦の中を飛んでいる夢だ。

 これはいったいなんの夢なんだろう?


 花に夢占いでもしてもらったほうがいいのかもしれない。そんなことを青色の空の中を飛びながら、清は思った。(まあ、起きたときには、きっとこの夢のことは私は忘れてしまうのだけど……)


 いつものように不思議な、巨大な白い雲の渦を眺めていると、その白い雲の渦の中に小さな影のようなものが見えたような気がした。(清はすごく目がよかった)


 あれはなんだろう? 確かに今、なにかの影があった。


 清は目を凝らして見る。


 すると、そこには確かに『影』があった。

 それも、『人の形をした人影』だ。


 ……あれはいったい誰だろう? 私の知っている人かな? (ここは私の夢の中なんだし)


 清は目を細める。


 そうやって、清がその人影の正体を探っていると、世界にとても強い風が吹いた。


 その風に、清の体は飛ばされる。


 ……やばい。流される。風の力が強すぎる。抵抗できない。


 清はばたばたと手足を動かして、空の中を飛ぼうと(あるいはそれは泳ごうとしているように見えるけど)する。


 ある程度、清はバランスと取りながら、なんとか強い風の中で、青色の空の中を飛ぶことができたのだけど、だいぶさっきまでいた場所よりも遠い場所まで飛ばされてしまった。


 人影はどうなっただろう?


 見失ってしまったのかな?


 清はきょろきょろと周囲を観察する。


 でも、もうさっきまで見えた人影の姿を見つけることはできなかった。


 ……結局、あの人影の正体はわからないままだったな。残念。


 清は思う。


 それから清は両目をつぶった。


 それから静かに意識を、まるで自ら手放すようにして、……緩やかに遮断していく。まるでこれから眠りにつくように。まるでこれから、また新しい夢を見るように。


 清は夢の中で、静かに眠りについた。


 すると次の瞬間、目を覚ました清は真っ暗な自分の部屋のベットの中にいた。


 見ていた夢は、やっぱり忘れてしまっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天の渦 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ