第17話 やっぱり、乗らなきゃダメなんすか?

 多魔世が訓練センターに来て3ヶ月が過ぎた。世間はそろそろ夏休みを迎えようとしていた。

 落下傘降下も板についてきたところで、鉢野前はちのまえ七代ななよから次の訓練を申し渡された。

「多摩世」

「はい」

「降下訓練はおおむね合格点あげられる出来だ」

「はい」

「いよいよ、次の訓練に進む」

「はい?」

「飛行機からの落下訓練に移る」

「え?!」

「何が、え?! だ?」

「いや、厳しッス」

「これをクリアしなければ、戦場に行けないぞ!」

「希望してないッス……」

 多摩世は肩を落とした。

「今日は特別に合同訓練ということで、千歳の航空自衛隊に協力してもらう」

「希望してないッス……」


 航空自衛隊千歳基地は東千歳駐屯地の南西5キロのところに位置した。

 多魔世たちが到着すると航空自衛隊の精鋭部隊が既に整列して待ち構えていた。

外出錦市そとできんいち空曹長。本日は合同訓練をお引き受けくださいましてありがとうございます」

 七代は隊列の前に立っていた自衛官に敬礼した。

「鉢野前3等陸曹、元気でやっていたか?」

「はい!」

「体の具合はどうだ?」

「もう大丈夫です」

「そうか」

 外出空曹長は七代が境界島で地球外生物、通称『ムカデ』でとの戦闘で大怪我をした時に病院へ空輸してくれた恩人だった。

「その節はありがとうございました。お陰様で命拾いしました」

「気にするな。任務だ」

「今日は落下傘降下訓練をお引き受けいただきありがとうございました」

「そこにいるのが訓練生か?」

「はい。流麗ながれ 多魔世たまよ、前へ」

 七代が振り向き、多摩世に促した。

 多摩世は不意を突かれて、一瞬、驚いた表情を見せたが、「はい」と言って七代の横に立った。

「これから落下傘降下訓練を行う」

 外出空曹長が厳しい視線を送った。

「はい……」

「今日はあそこにあるC-130Hを使う」

 外出がハーキュリーズと呼ばれている深緑色の戦術輸送機を指した。

「……はい」

「質問はあるか?」

「乗るのはあたしだけですか?」

「今日は習志野駐屯地から特別訓練に来ている第1空挺団と飛んでもらう」

 外出が後ろに並ぶ精鋭たち顔を向けた。

「特殊部隊だ」

 七代が補足した。

「そんなすげぇおじさん達と一緒に飛ぶんですか?」

「お前も少年特殊作戦群配属の隊員だからな」

「はぁ……」

 多魔代はうなだれた姿のままC-130Hへ連れられて行った。

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