第2話

「おはようスウキくん、さっそくで悪いけどこの本をウスイに返しといてもらえない?」

「うん。」


「スウキ俺に何か?」

「これ……。」


 皆までいわれずとも本の表紙で貸した本をキメラの代わりに返しにきたのだと察した。昨日読み終えたから返すと業務連絡メールにあったし、あの人ああいうところあるんだよな。とウスイは呟く。


「今……僕も読んだ。」

「出勤時間的にパラ読みしたのか?」


「ウスイ隊長!」


 下級兵士が目を輝かせながら、元気に駆け寄って来る。これはよくあることで、年は若いが実力と人望で人気のあるのも頷ける男だと思う。


「おいら昨日たすけていただいた新入りの保瀬貝 グレンです!」

「頭から食われかけてたやつか、律儀だな」


 スウキは本を返したので、用もないことだし、とこの場から食堂へ移動することにした。

 朝食は家で済ませたが、お上品すぎてお腹にたまらずなのだ。食堂で丼をかっ食らうものがニュアンス的に好ましい。


「ありがとね」


 スウキは食堂でキメラに会う。本を返したことを感謝された。


「キメラさん美人だよなあ」

「彼女にするには高値の花だぜ」

「だな、ほかのヤローにじろじろみられるなんて耐えらんねえ」


 キメラは芸能人ばりに美人だが、手放しで恋人になりたがる男がいないのもまた事実。ついでにデイモンには好かれない天使に愛された存在。


「ほら牛丼だよ」

「おいしい。」


 物静かな彼からは想像のつかない豪快な食べっぷりで、若者に食べさせたがりのおばちゃんはニコニコだ。


「鏡家ではどう? ちゃんとご飯出されてる?」

「高級。」


 お世話になっている屋敷とは、鏡キメラの生家である。本人は帰りたがらないが理由はわからない。

 同じ家から出勤したら噂になるから、という訳なら一番可能性は高いもののスウキを住まわせる意味がない筈だ。


「それならいいけど、今日の任務はこの前幹部になった那波マレルと新人の保瀬貝グレンを連れて行くように指示があったわ」

「3人?」

「ええ、おしゃべりな女の子だから心配だけど」


 任務なら仕方がない。断るわけにいかないとスウキは目で訴え使命感をあらわにする。


「きっと遂行できるって信じてるわ」




「ひえ……スウキ隊長」

「よろしく。」


 新人だって言っていた彼を指名したのは陰謀めいているが、違和感はあれどもスウキがどうこう口出しすることではない。


「はい!」

「チーす」


 那波マレルと思わしき高校生くらいの少女が大股で二人の間に入ってくる。


「あー!お前!」


 グレンは大きな声を出して彼女を指さす。当の本人はすっとぼけてスマホをいじる。



「……知り合い?」

「知らねっす」


 スウキに問われると、スマホをしまって他人だと即答する。


「同じクラスの那波だな!」

「誰だよおめー」


 グレンのほうが一方的に知っていても那波は無関心という感じだ。


「これが痴話喧嘩。」

「「ちげー!」」


「それより任務いきましょうや」

「なにするんすか?」

「喫茶店。」


 スウキがそういうと、二人は言葉が足りないなあという顔で見る。


「休憩すか?」

「人間に擬態したデイモンを探るんだろバアロめ」

「そう。」



 店に入り気配を探るも、何も感じられない。むしろ外のほうがデイモンの残滓がある。


「あの店員マブいぜ」

「は?」


 喫茶店に入るやいなや、那波が渋いマスターと爽やかな男を物色しだす。

 店員は顔をまじまじ見られても、慣れているのかまったく動揺せずに注文をうかがう。


「あんた名前は?」

「大門です」

「那波んなとこでナンパすな」

「これが修羅場。」

「「ちげー!」」



 飲み物の注文はしたが、那波だけがケーキやナポリタンスパゲッティを食した。


「あの、助けてもらえませんか?」

「え?」


 帰ろうとしていると、女子高校生が神妙な面持ちで店に入ってきた。

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祓魔のロスターボウガン エベル @zesuswomann

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