祓魔のロスターボウガン
エベル
第1話
現代に一般人も可視化できる悪魔、通称デイモンが解き放たれ、封じる特務機関、バルベロが作られた。
しかし、あくまでも普通の人間より対抗できるというだけで、完全に倒せる人間は少ない。
悪魔を倒せる伝説の武器、通称ロスターは武器に宿る天使、名をエンゼルスに認められた者が扱える。現在は選ばれし7人だけが使い手レジェンダリーだ。
「隊長はまだか!?」
「つべこべ言うな!」
「オイラたちにできるこたあ到着までここを守ることだ!」
警察や軍人は母数が少なく、人員を削ることができない。隊員は素養のある民間人ばかりである。
中には逃亡するものもいて、いかに仲間を統率するのかが6つの部隊長に試される。
「ウスイ隊長ーー早くきてくださいー!」
デイモンに頭からかぶりつかれそうな下級隊員が半泣きで叫ぶ。その瞬間、背後から少年が飛び掛かって迫ったデイモンを切り伏せる。
「待たせたな」
少年は剣を構えて、リーダー核へ立ち向かう。知能の高い上級デイモンは少年を視界にとらえながらまったく動かない。
しばらく両者は沈黙していると、先にしびれを切らした上級デイモンが指示の音波を送ると、一斉に下級デイモンが少年に飛び掛かかる。危機的状況の中、烏合の衆を蹴散らす高速の弓矢が舞って敵を一網打尽にした。
「敵は一人なわけじゃないよ。」
少年とは別の部隊を率いる虚ろな目の青年がボウガンを構えて正面から頭部を射ぬくと上級デイモンはガラス細工のように砕け散る。
部下の下級デイモンも一斉に破裂して周囲は光に満ち溢れる幻想的な空間となった。
二つの部隊は長居する必要もないとそれぞれの隊長と共に本部へ帰還する。
「お疲れウスイ」
「キメラさんのほうはお仕事終わっていたんですね」
「2度目の出動はどうだった」
「特になにもなかったです」
「あらスウキくんもお帰りなさい」
「うん。」
部隊長の一人である鏡キメラという女性がにこやかにスウキへ声をかける。彼は焦点の合わない目をして不気味な男だと陰で言われているものの人類の希望という立場である。
スウキに友好的でもなく嫌うわけでもないウスイは機関で慕われるキメラが異質な彼に優しく接するとが珍しくうつった。なぜなら学校で例えるならカースト上位の女子が下層ランクの男子を気に掛けるようなものだからだ。
少し前まで学生だったウスイは上でも下でもない立場だったものの、クラスのカーストの恐ろしさは身に染みている。だからといって本人に理由を聞くことはできなかった。
「二人とも報告が済んだらカフェにいかない?」
「いいよ。」
「とくに予定もないので行きます」
「スウキ!」
仕事が一段落して建物から出ると門の前に女性がいて名を呼びながら走ってくる。異常に驚いてスウキがウスイの背に隠れた。
「だれ?。」
「あたしよ!同じ小学校だった野藻オモギよ!」
熱烈なファンが妄想をこじらせて昔の知り合いを装っているのだろう。よくあることだとウスイは動じない。キメラは下手に口を挟むと誰よこの女!とキレられるのを考慮して黙っている。当のスウキは対人恐怖症で彼女に説明せず走って逃げた。
「スウキ……」
野藻は短い茶髪の毛先をつまんでいじり出す。
「野藻さん……よかったらお話聞かせて?」
「あ……ありがとうございます!」
放置するわけにもいかないとキメラが声をかけると意外にもまともに話せるようだ。いきなりキャットファイトが始まらなくてよかった。そう心の中で思いながらウスイは隊員寮へ向かった。
「若いんだからたーんとお食べ!」
「うん。」
隊員の中には遠方だけでなく幼いころデイモンに家族を殺されて身寄りがいない者がいる。素質があるものはデイモンに嫌われる加護が強いのだが反対にとても好かれやすい花婿や花嫁と呼ばれるものがいる。隊員の家族の死因も根本をたどればほとんどがそれだった。
寮母はそんな彼らの家族のような存在で、3歳で母親を亡くしたスウキもまた同じだった。スウキも幼いころから身寄りがなく今は天涯孤独だがとある屋敷で世話になっているためここに住んでいるわけではない。本部に近いのでここへ逃げ込んだのだ。
「ごちそうさま。」
「もう帰るのかい?」
「またくるね。」
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