タイトルに「リハビリ」とあるように、これは創作における何かしらの回復を目的として、作者さまが毎日更新し続けた作品です。
その日数、74日間。季節もすっかり変わるくらいの期間、毎日、休むことなく書かれました。
その中身はと言うと、ほんとにこれリハビリを必要とする人が書いたのかしら、と思うほどにおもしろい。
バラエティ豊かな性癖、男の娘の青春、宇宙人もいるゲームバトル、バラン、ゾウ、桃太郎SF、戦艦時空バトル、ラブコメ。
すっと入ってくる整った文章。不意打ちでかまされる下品なセリフ。バラン。ナンセンスコメディ。熱い青春。強烈なキャラクター。練り上げられたSF展開。
バラバラだったものが繋がってひとつの大きなストーリーとなり、結末を見届けた後にはスタンディングオベーションしたい気持ちになりました。とてもとてもおもしろかった!
個人的に、喋るだけですべてをかっさらっていったゾウさんの存在が忘れられません。「かわいそうなのでは抜けないゾウ」は最低で最高でした。
あと終盤でねじ込まれたバランの存在にぜひ注目していただきたいです。
物語を愛するすべての人たちに読んでもらいたい作品です。
タイトルに冠された『まいにち』が示す通り、本作は2020年5月19日~7月31日の間、毎日欠かさず更新されました。
時には昼間に、時には深夜に。
数編紐解いて読んでみれば、ひとつひとつの話のクオリティの高さに驚かれることと思います。ショートショートとして出来のよい『不在堂書店』『同担拒否の女』、脱力系のオチが楽しい『雑記バラン』、謎のゲームを通して語られるゲーマーたちの友情と青春の物語『棒 オンライン』、タイトルからして嫌な予感しかしない『かわいそうなのでは抜けないゾウ』……
本作品群の特徴として、概ねすべての物語がゆるやかにつながっています。バラバラに撒き散らされた色とりどりの短編が、寄り集まってモザイクアートを成すように、一組の男女とその他約一名が織り成す甘酸っぱいラブコメディ『ゾウ 転生編』や、誰もが知る有名なおとぎ話を驚くべき形に膨らませたSF『桃太郎フラグメント』を経て、最終章『反重力力学少女と女装少年の詩』へと収束していきます。
それぞれが独立した物語ともなっていますので、どのように読んでも問題ないかと思いますが、リアルタイムで追いかけた読者のひとりとしては、できれば同じように読み進めて欲しいなあと思う次第です。つまり毎日、1話ずつ。
毎日の生活のリズムの中に、物語が組み込まれていく感じ。毎朝のはじまりに観る朝の連続テレビ小説や、仕事終わりに聴くNHK-FMの『青春アドベンチャー』のような、いつの間にか物語が自分の心と身体に馴染んでいるような感覚。
それは、時間をかけなければ味わうことのできない、贅沢なひとときです。
まさにリハビリ目的のお話らしく、その展開はまさにカオスそのもの。
繋がっていないようでそれぞれが緩やかに繋がりがあり、
どの話も特色が混沌とシモネタに振れていて、
それでいてたまに熱くなったり、
感動したりしてしまう展開もあって、
なんでもありと言わんがばかり。
カオスが好きなら寄っといで!
※ここから完結後追記
そんなバラバラだったカオスもやがてそれぞれが集まり、
まさかまさかの一つの物語となっていく。
鬼ヶ島が飛び、宇宙人とゲーマーが大暴れし、女装少年の股間でゾウがしゃべる。
それら全てがそれぞれに意味を持つのである。
熱く、感動し、そして爽快な展開。
このカオス、ぜひ最後まで見届けて欲しい。