第18話 ひとりな私
最後の診察日。
基本人格を呼び出すことになった。
最近、思い出した記憶に、伝え歩きの時の乳児の私がいた。
6歳上の叔母が、階段から私を突き落とした。
足元に見える階段。空を飛ぶ記憶。
母に確認したところ、事実であった。
この出来事が、基本人格かと考え、診察でもドクターOに話したが、まあ、やってみましょうとのことで、診察開始。
ドクターOが、
「一番小さな聡子ちゃん、出て来て。」
その呼びかけに、母のお腹の中で、壁に押しつけられている私が出てきた。
苦しがっている。
双子のために、狭かったようだ。
ドクターOがさらに、
「もっと小さな聡子ちゃんはいないか、探してみてください。」
今度は、雲と雲の間のようなところに果てしない部屋のような空間がある。優しく穏やかな世界が広がっていたので、それを伝えた。
ドクターOは、
「あらら、戻り過ぎちゃったね。前世まで行っちゃったな。現世の聡子ちゃん、他には、いないかな?
だったら、一番小さな聡子ちゃん、いまの聡子さんの年齢まで成長してください。まだ、統合されていない人達もみんなひとつになりながら。
成長出来たら、いまの聡子さんと一緒になって、ひとりの聡子さんになってください。」
少し時間がかかったが、ひとつになった。
ドクターOが、
「どうですか?
身体が軽くなったでしょう?」
と言ったが、
何故か、胸が苦しくて、身体は重い。
そのことを伝えると、
「誰かいるのかな?
あなたは、誰ですか?」
と、ドクターOが聴いてきた。
言われるがままに、穏やかにしていると、次々と返事が頭に浮かぶ。
大正生まれの17歳の女の子。心臓病で、道端で亡くなったようだ。名はエツコ。
まったく身に覚えはないが、最近、やけに霊が、私の背中についてくることが多く、憑依されることに疑問に感じていた。
その度に、フラッシュバックと同様な感覚で、目を閉じて、霊に話しかけて、閉じた目の中に見える光の扉から、光の世界に送ることを自宅で繰り返していた。まだ残って居たとは知らなかった。
私の魂は強くなったと思っていたのに、まだ霊との波長があってしまうのか?
ドクターOから、
「これからも、弱気になったりすると、また人格解離することがある。憑依もあるかもしれない。
でも、聡子さんは、自身で、解離した自分を統合したり、霊も光の世界へ戻して行けるから、大丈夫そうだね。」
と言われた。
また、心配になったら、いつでも来ていいとも。
あっという間の、診療期間だったと思う。
ドクターOからは、
「聡子さん自身が治療に対して、積極的に努力したからこそ、短期間で完治に至った。もう、全く病気ではないから、いつでも就職も可能だと思います。」
とお褒めの言葉をいただいた。
私もいままでの人生の分、これから幸せになって行きたいと話し、ドクターOに感謝の気持ちを伝えた。
こうして、診察は、終了。
ドクターOから、精神病ではないとのお墨付きをもらったのだ。
これからは、安心して頑張っていける。
………
今回の治療体験を通して、魂について、輪廻転生ついて、いろいろと調べたり、たくさんの本を読む機会になった。
そこから、永遠の魂についても実感することが出来た。
何のために、私はこの人生を生きているのか。
業(カルマ)が、深いとも言われたが、それさえも、自ら望んで得た宿命、場所に生まれたのだと。何かを学ぶ為、成長する為に、私はこの人生を歩んでいることを知り、感謝に変わった。
また、自ら命を断つことは、根本的な解決にはならないと学んだ。
自ら命を断つとさらに辛さが増す。皆、後悔していた。私が知る彼らも。
永遠の魂を自死で途絶えてさせてしまっては、魂はさまよい続けるだけになり、苦しみもエンドレスなのだと。
自ら命を断つことを、本人の意思の尊重という人もいる。
否。
それでも、命を断つ事では、苦しみは解決できないと思う。目をつぶってでも、耳を塞いでても、居場所を移してでも、その時間が過ぎることを待って、生きて欲しいと思う。
私もそうやって、いままで生きて来た。実際、心の願いは身体に伝わり、視力も弱くなり、聴力も弱くなってしまった。居場所さえ、転々とした人生になってしまったが、それでも、今は、生きていて良かったと思えるようになったから。
頑張らなくてもいい、生き続けたら、いつかは、光の世界に招待される。
自分だけは、自分を諦めさえしなければいい。
魂は、永遠なのだから、そこから新たな人生は続くのだから。
今は、そう思える。
私の感覚が、妄想やオカルトちっくな思い込みではないのか、確認するために、ハローワークのカウンセリングの林さんとも語り合っている。
私の精神は、一般社会に適応出来るようだと思える。
心が平和になっている。
余談だか、興味本位で鑑定士に過去世を見てもらったところ、私の前世は、巫女だったと。神の使いだったことから、本当の貴女は、人生の意味も全て分かっているはずだと言われた。
そうかー、巫女でしたか。
まあ、今の私には、スピリチュアルの世界に踏み込むほどのパワーは無いですがね。
人生は、自分が思っているよりも、きっと楽しいことが待っていると信じて。
前に進もう。
少し遅くなったが、私の人生は、これから始まる。
おしまい
最後まで読んでくださった先輩の方々、感謝致します。
最後まで書くことが出来たのも、先輩方からの励ましがあったからです。
本当に、ありがとうございました。
多重人格な私 れんぎょう @pupupunopu
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