未来への飛翔

 大地は燃え盛り、生命は消え果てた。


 未来のないその大地に、1人の少女が空から降り立つ。

 彼女の白い着物に緋袴という衣装は、親である“博士”の趣味だ。


 「ホシ・No・ミコ。任務より帰還しました」


 ミコは辺りを見渡す。炎と瓦礫だらけの大地を、彼女はARで地形を把握しデータと照らし合わせる。

 彼女は目的地まで歩み始めた。親である“博士”元に、惑星探査の情報を届けるために。


 ──間もなく、地球は終わるのだ。我が愛娘、ミコよ──

 博士の音声データが彼女のAIに現れ、周囲をモニターする彼女の計算を邪魔する。

 ──先に銀河系へ送った衛星プラントと合流し、その地点の周囲に存在する惑星が、我々人類がテラフォーミング出来る場所が調査して帰還してくれ──

 博士の切羽詰まった表情が、ミコの最後に見る顔だった。

 

 ミコは衛星に合流した地点でトラブルが発生した。衛星とドッキング出来ず、身体が損傷して修理を余儀なくされた。

 最初に調査した惑星では、時空の歪みから発生したブラックホールに放り込まれ、運良く時空の隙間から抜け出せたものの、全く違う惑星系へと飛ばされてしまった。

 星座からルートを割り出し、衛星に帰還したものの予備バッテリーはなくなり、彼女は衛星放棄を余儀なくされ、以降の充電は各惑星の仮居住区で行うしかなかった。

 第二の惑星は、既に違う生命体が存在していて、ミコは神として崇められた。ミコは人類のテラフォーミングの為に、既存生命体をコントロールし配下に置いたが、彼らは原水力をめぐって勝手に戦争し滅びた。惑星も死の灰が降り注ぎ生命体は二度と生まれなかった。


 今、ミコが脳内に抱えるのは、唯一テラフォーミングの可能な第三の惑星の存在だった。

 その情報を博士に届けに、ミコはかつて大学だった場所に足を踏み入れた。

 瓦礫だらけの廃屋の真ん中には、銀の彫刻が形を保って佇んでいた。

 

 《センサー起動。ただいま、ミコ》

 彫刻がミコの出す周波数に反応し、博士の記録した音声を流し始めた。

 《いい惑星は見つかったかい? 残念だがコチラは生存が絶望視されている。もう人類は終わる、ミコには、その惑星で新たな生命体の誕生を手助けしてほしいのだ》

 そう言い終わると、彫刻はミコを送り出す讃美歌を流し始めた。

 ミコは彫刻に見送られ、再び空へと飛翔した。


 燃え盛る星が、ミコを送り出すようにその炎を輝かせた。

 ミコは新たに託された使命を抱え、再び宇宙の彼方へと去っていった──

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負 影迷彩 @kagenin0013

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