第10話 特訓

「よし、今日から気魔法の特訓だ。」


「おう、早いのう、ソウ。早速気魔法を試すのか」


「おはよう、グロム。そうだな、試験まであと9日、実質1週間くらいしか時間はない。寝てる暇なんてないんだ。」


「ほう、じゃあ一つだけワシからアドバイスしてやろう。気魔法は魔力そのものを操る魔法であることは知っておるな。」


「ああ、昨日読んだからな」


「うむ、そして、無属性魔法も同じく魔力を扱うが、気魔法以外は身体の外に魔力を出すことはないんだ。身体強化魔法を考えれば想像しやすいだろう。無属性魔法で魔力を操るものはいるが、身体の外に放出できるのは気魔法使いだけだ。だからワシもお主に初めて会った時すぐに気魔法使いだと分かったのだ。体から魔力が漏れてたからな。」


「なるほど、そういう訳だったのか。でも、グロムは魔力が見えるのか?」


「おお、いいところに気づいたのう。ワシは見えるまではいかないが感じることはできる。多少、身体強化魔法を使えるからな、魔力を感じれるんじゃ。」


「身体強化魔法も魔力を使ってるんだもんな。てことは、よくマインも俺から何か感じると言ってたのは魔力のことだったのか。あいつも身体強化魔法のギフト持ちだもんな」


「ん?なんか言ったか?」


「いやなんでもない。」


「そうか、まあつまりソウ、お主はすでに魔力が体から漏れ出てる。その魔力を感じ取れるようにならんことには、扱うのは無理だろな。」


「なるほど、感じとるか、ありがとう。やってみる!!」


「おいおい、しかしそんな簡単なことじゃ‥‥」


「これが魔力か。なんか感じ取れるぞ!」


「そんな‥バカな‥」


ワシは、特殊魔法を研究するものとして無属性のギフトはないところから身体強化を少し使えるようになるまで3年、魔力を感じとるまで1年かかったというのに、わずか数秒でなんて。さすがは、あの気魔法のギフト持ちか。


「ありがとう、グロム。なんかできる気がしてきたよ。」


「ふっ、ワシの苦労もしらず。おぬしは勝手にやっておれ。(どうせもうワシに教えられることはないしな)」


グロムがなぜそんなに不機嫌なのか。それにソウは全く気付いておらず、首を傾げていた。そして、魔力を感じ取れたことで、気魔法習得への糸口を見出したことにテンションが上がり、夜中になるまでずっと気魔法の訓練をするのであった。





ドッカーーーン!そんな音がグロムの家に響いてきた。


「おーい、またかソウ!」


「ごめんごめん、またついついやり過ぎちまった。」


「試験はもう明日だろ今日は早く寝とけ。」


「おう。そうだな、そうさせてもうよ。」


やっぱ、完璧にコントロールすんのはまだ難しそうだな。まだ魔物くらいにしか使えねーや。グロムの庭で気魔法の訓練をしていたソウはそんなことを呟いた。



「おいおい、こんなのどんな魔法打ち込めばこんななるんだ。」


グロムは、庭での騒音の後、庭に来ていた。グロムは、気魔法の練習場所として庭を使っていいとソウに許可していたのだ。それはグロムの家の庭が強力な付与魔法によって保護されているため、ちょっと訓練に使う程度じゃ壊れないと思っていたためだ。しかし、グロムの目の前には、巨大な岩が粉々になった光景が広がっていた。


「確かに、いくらでも壊していいとは言ったが。まさかほんとに粉々になるなんて。これはガッハフィーネの一品なんだぞ。」


ガッハフィーネ、それは1000年に一人の逸材と言われた、付与魔法の使い手。ガッハフィーネが本気で施した物は数少ない。理由は簡単だ。付与魔法は強力な付与魔法であればあるほど、次の付与に時間を要するものなのだ。そして、その時間が長い付与魔法師がより優秀と言われる。ガッハフィーネはその期間が5年なのだ。ちなみに一般的な付与魔法師は1日だ。


それをソウが壊したことに、グロムは若干顔を引きつらせながらも、気魔法使いの誕生に笑みを浮かべていた。

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ソウ-剣士としてLegend級冒険者を目指すが、手にしたギフトは謎の魔法?- チョコとコロン @chococollon

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