第9話 気魔法の正体
昼ごはんを食べ終わった二人、グロムとソウは書斎に居た。
「ここはワシがいつも研究する時に使っている部屋じゃ」
「これはすごいな」
そこには、大量の本が置いてあった。本はこの世界では貴重である。その本が大量に目の前にあったのだ。そんな光景にソウは目を奪われた。
「すごいじゃろ、給料のほとんどはこの本たちに注ぎ込んでる。」
イグニス王国No.1の教授ともなれば相当な給与のはずだがそれをほとんど全てか、まあこれだけの本を見ればうなずける。
「少し言ったと思うが。ワシは特殊魔法専門でな。もちろんその中には無属性魔法の気魔法も含まれている。まあ、ワシとて気魔法ほどのレアなものとなれば文献も少ないが、まずはこれだな。」
グロムはそう言いながら、一冊の本を取った。
「無属性魔法の秘密??」
グロムが手に取った本のタイトルは無属性魔法の秘密という本だった。気魔法の本が出てくるのかと思っていたソウは少し困惑した表情で尋ねた。
「ああ、これは無属性魔法の秘密を解説しているが、気魔法を使う上でも理解した方がいい物だと思う。ソウ、お主は文字は読めるのか?」
「あまり得意じゃないが、簡単なものなら」
「そうか、じゃあこのあたりを読めば大体重要な内容は掴めるだろう。ワシは、他の研究の続きをやっとる。まあ研究というより趣味だがな。」
「おう、ありがとう」
ソウはグロムに勧められた本を読み始めた。少し難しい文章も多かったが、なんとか理解することができた。
「なるほど、こういうことなのか」
ソウは、本を読んでいく内に少しずつ、なぜこの本を勧められたのか理解し始めた。
本には、無属性魔法がなぜ無属性魔法と言われているのか。ということから、無属性魔法とはどんな特徴を持っているのかまで詳しく書かれていた。気魔法に関してはあまり乗っていなかったが、無属性魔法に例外なく当てはまることが記述されていた。
「おう、ソウよ、読み終わったか。内容は理解したのか?」
「ああ、大体な」
「ほう、じゃあ簡潔に説明してみよ。」
「おっけい、まず、無属性魔法とは文字通り属性を持たない魔法だ。これはよく知られていることだ。しかし、むしろ無属性魔法の方が魔法の根元であることはあまり知られていない。要は、無属性魔法とは、魔力そのものを操る魔法なのだ。属性魔法は、魔力を変換させることで可視化され、扱いやすいエネルギーまたは力に変え、扱う魔法だ。つまり、無属性魔法は、不可視の魔力の状態で、変換をせず、魔力そのものを操るものなんだ。」
「うむ、そうじゃな。まあ、そんな感じじゃ。つまり気魔法も魔力を操る無属性魔法ということじゃな。じゃあ、次は気魔法の本じゃな。気魔法についての本は、ワシもこの一冊しか持っておらん。大切に読むんだぞ。」
「ありがたい、感謝するよ」
「まあ、気魔法がもし発動できたら、しっかりと見せてもらうぞ」
「お安い御用だ」
「じゃあ、これだ。なかなか内容は面白いぞ」
『魔法の根源たる魔法、気魔法』というタイトルの本を渡された。
「魔法の根源たる魔法か、こりゃワクワクするな」
ソウは、今まで剣一筋で、あまり魔法に興味のなかったソウも、自分のギフトが魔法の根源たる魔法なのかもしれない、そんなことを思うと心が躍った。
ソウは、『魔法の根源たる魔法、気魔法』を開いた。
初めの書き出しはこうだった。この本は私が長年気魔法を研究した成果、全てを残すための本である。しかし、長年の研究すべてと言っても期待しないで欲しい、気魔法について解明できたことはほとんどないのだ。
長年研究した者であってもほとんどわからないのか、これは少し厄介かもしれない、そんなことを思いながらソウは本の続きを読み進めた。
読み進める中で新たな発見の一つは、気魔法という名前の由来だ。気魔法の気とはいわば、魔力のことで、昔は魔力を気と呼んでいたことから名がつけられた。そのことからわかるように気魔法とはやはりすこし魔法の根源的な者である可能性が高いという考察があった。
さらに、ソウにとって1番大きな収穫は、第一階級気魔法と第二階級気魔法が大体分かったことだ。
第一階級気魔法は、「放出」であり、魔力を身体から発するという類のもののようだ。フォレストベアの時のあれは、この第一階級気魔法の魔力放出で間違えないだろう。
そして、第二階級気魔法は、「形成」だ。魔力をさまざまな形に形成するようだ。第三階級から先は不明とのことであった。
そもそも第二階級レベルの魔法であれば使うものも比較的いるが、第三階級レベルの魔法自体が相当難易度が高くなると言われている。
「まあこんだけ分かってるなら十分だ」
本の内容はまだまだ気魔法のほんの一部だと冒頭に書かれていたが、ソウにとって十分な内容だった。
そして、古い伝記によるとこのイグアス王国の初代は気魔法を使っていたという言い伝えがあることから、昔は非常に良いギフトと言われていたようだ。
「もうこんなに外が暗い。気魔法は明日からとするか。」
本を戻し、ソウは今からでも気魔法を使いたい気持ちを抑えて、グリムの客室で眠りについた。
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