Act.30 次期
無粋な声にニコラスは身構えながら振り返ると、そこには膝をついた大男の姿があった。
一面の花畑とうずくまる大男。なんともおかしな取り合わせであった。
「何してるんだ、あいつ」
「僕の魔法で吹き飛ばしていいですかね」
シオンが早口で物騒なことを言った。早く東屋にゴールしたいのだろう。
「やめとけ。天使像を刺激してもまずい」
(何しろ、俺らの信心に免じて通してくれたらしいからな。なにか無礼なことでもしたらどうなるか、わかったもんじゃない)
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(む、胸がいてえ⁉)
必死に視線を下げると、まず目の前の地面に穴が開いていた。さらに視線を下げて自分の体を見ると、胸が真っ赤に染まっていた。
「・・・・う、うそ、だ」
いつの間にか首を180度回転させた天使像から放たれた雷によってファビアンの頭部が粉々になった。その惨劇は、ルイズからはっきりと見えてしまっている。
「・・・・・・・・」
並みの女なら悲鳴のひとつでも上げるだろうが、彼女は気丈にも歯を食いしばってその恐怖と凄惨さに耐えていた。
そんなファビアンの先では、ニコラスとシオンが東屋に到着していた。
「こ、ここがゴールでしょうか?」
「・・・・そんなに身構えなくても、あんたに譲るよ。魔術師の俺が、右腕一本で勝てるわけないし」
「い、いえ、そういうつもりではなく・・・」
と言いながらも、シオンの視線は東屋に釘付けであった。まあ、無理もない。魔法大学のほぼ最高の権力が手に入るのだから。
ニコラスは東屋の一歩手前で止まり、進んでいくシオンの後姿を眺めていた。東屋に上がったシオンは、中央に浮いている球体に触れた。
『ほう、受かったのはシオンか』
その瞬間、アイン教授の声が球体から聞こえてきた。その楽し気な口調に合わせて、球体も小刻みに揺れている。
「は、はい!」
『まあ、ニコラスに色々手伝ってもらっていたのは見ておったが、まあ良い。ひとまずは合格じゃな』
「ありがとうございます!」
球体に向かって90度のお辞儀をしているシオンを眺めながら、ニコラスは新たに取り出したタバコに火を点けた。
(よく言うぜ。これぐらいの謎解きで教授位が決まるか。これから地獄の教育が始まるんだ。喜んでいられるのも、今のうちだと思うがな)
過去にも監督役を引き受けたことがあるニコラスは、タバコの苦い煙とともにため息をついた。
「疲れた・・・・・・帰りてえ」
充満する花の香りの中でタバコの
第一章 星と天使 完
※ご愛読いただき、ありがとうございました!(^^)!。第2章はもう少し先になってしまうかもしれないのですが、待っていただけると嬉しいです。
B.Y.春風落花。
元ヤクザ、異世界でギルドに就職する 春風落花 @gennbu
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