25.2021年ベストアルバム9選

 2021年発売のアルバムの中から、必死になってベストアルバム9枚を選びました。アルバム内の特に好きな曲や、本エッセイで取り上げたことがあるものについては関連記事(ベスト選出やまとめは除く)も掲載しています。

 そちらとあわせて、2021年リリースではないけど、お気に入りのアルバムも簡単にご紹介。

 動画リンクは外部サイトになってしまうので掲載しませんが、いずれもフルまたは何曲かがYouTubeやBandcampなどで聴けますので、気になったものがあったら、ぜひ覗いてみてください。


―――お品書き―――


・2021年ベストアルバム9選 ※聴いた順

・2021年リリースではないけどお気に入りのアルバム

・2021年総括


―――――――――――



● 2021年ベストアルバム9選


◯ Puma Blue / In Praise of Shadows


 前々から好きなUKのSSW、文学に詳しい人ならピンとくるであろう「陰翳礼讃」の英訳タイトルを冠したアルバム。

 その名の通り、元々彼の音楽にある影の雰囲気・美しく淡い暗闇を表現している美しい一枚。静かに浸りながら落ちていきたい音楽の世界、ホワイトノイズさえ心地よい。


・特に好きな曲

Velvet Leaves

Snowflower



◯ Yard Act / Dark Days


 イングランド・リーズ拠点のポストパンクバンド。デビューEPで4曲しか入ってないのに、2021年の間ずっと引きずって来た存在感。やさぐれたい時には持って来いの、がさがさした音がたまらない。

 この曲をバックに、重たく長いモッズコートを着て、雨上がりのオール明けの朝にぐったりした体を道端に放り投げたい。


・特に好きな曲

Dark Days

Fixer Upper


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◯ Royal Blood / Typhoons


 ベースボーカルとドラムという、リズム帯大好きな私が飛びつかないわけがない構成のイギリス・ブライトン出身のロックデュオ。聴いた瞬間「ウワーーーーッ!」とテンションが上がったのが、今でも忘れられない。

 「グルーヴィーでダンサブル、ヘヴィなのに踊れるロック」という謳い文句そのままに、重たい音が中心にもかかわらず暑苦しさも窮屈さもないロック。きっとライブは相当楽しいと思う。


・特に好きな曲

Trouble's Coming

Limbo

Boilermaker



◯ black midi / Cavalcade


 2021年は、本当にこんな感じのポストパンク系ロックを多く聴いた印象がある(特に2021年前半)。ロックだけじゃなく、ジャズやプログレ、クラシックにアンビエント……と影響を受けた数多のジャンルを思わせるハイブリッド。

 来日ライブ行くはずだったんだけど、延期になったまま2021年が終わってしまった。2022年には観られたらいいなぁ。


・特に好きな曲

John L

Slow


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◯ Jungle / Loving in Stereo


 イギリスの音楽プロデューサー、Josh Lloyd-WatsonとTom McFarlandのユニット。どうもありがとう……。個人的に、2021年はこのアルバムなしには語れないと思うほど良く聴いた。

 バチバチに決まるディスコサウンド、"今時"な80年代っぽい音楽がかかれば自然と心も体も踊り出す。捨て曲がないどころか、一瞬でも格好悪い瞬間が無い一枚。


・特に好きな曲

Keep Moving

Talk About It



◯ John Glacier / SHILOH: Lost for Words


 クール・エレクトロニック・ポップとはまさにこのこと。初めて聞いた時に格好良すぎて心の中でひっくり返った一枚。

 彼女にとってこれがデビューアルバムらしくて、なんてこった……と途方に暮れた。今後ますますのご活躍を……楽しみ。


・特に好きな曲

If Anything

Trelawny Waters



◯ Damu The Fudgemunk / Conversation Peace


 ヒップホップやパンクなど、様々な音楽の格好いい所取りしたエレクトロニカ。レーベルの企画でリリースされたアルバムなので、通常のDamu The Fudgemunkのものとは幾分勝手が違うかもしれないけれど、本当に格好いい。

 職人気質な気配さえ感じるストイックな音楽。ぶつ切りじゃなく通しで聴きたい、これ一枚で仕上がってる。


・特に好きな曲

Upload Optimism, Ft. Damu the Fudgemunk

Four Better or Worse Part 4, Ft. Damu the Fudgemunk



◯ Kito / Blossom


 オーストラリアのプロデューサー、Kitoの程よく煌めくエレクトロニカが詰まったEP。はっきり言ってどの曲も好き。全曲ボーカル付きということもあって聴きやすく、それでいてパリピ過ぎない華やかさとエモさがある。ベッドの上で、泊まりに来た友達と内緒話をするような。

 キャッチーな曲が多いこともあり、ふとした日常でこのEPの楽曲が脳裏をよぎることが多かった。


・特に好きな曲

Recap

Skin & Bones (feat.Winona Oak)



◯ Claptone / Closer


 大好きなひんやり系エレクトロニカ、ドイツの覆面DJであるClaptone。ミステリアスなところと、私のようなエレクトロニカ初心者でもわかる格好良さを両立してる。

 このアルバム、最初は前作ほど好きじゃないな……なんて思っていたけれど、そんなことはなかった。聴けば聴くほど好きになる。この人の音楽に、淡々とした巧いボーカルが乗ってるのが大好き。


・特に好きな曲

Just A Ghost ft. Seal

Queen Of Ice ft. Dizzy


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● 2021年リリースではないけどお気に入りのアルバム


◯ Jordana / SOMETHING TO SAY TO YOU (2020)


 アメリカ・カンザス出身の若干19歳のSSW・Jordana Nyeによるソロプロジェクト。2021年の春先を支えてくれた大事なアルバム。

 空気が緩くてなんとなく湿度と気温が高くなってくる、体がだるくなる季節にぴったりのローファイ・サウンド。最低限の音しかない分、心地よさだけじゃなくザラザラした不安定さもあるのが、まさに春。



◯ Bruno Major / To Let A Good Thing Die (2020)


 UKのシンガー・ソングライターで、かのBillie Eilishも愛聴しているアーティスト。

 Salvador Sobral好きにはたまらない優しい歌声、HONNE好きにはたまらない美しいメロディ、Tom MischやFKJ好きにはたまらない音作り……。聞けば聞くほどリラックス出来るアルバム。



◯ Sam Prekop / Sam Prekop (1999/再発2021)


 アメリカ・シカゴで結成されたバンド、The Sea and CakeのフロントマンSam Prekopのソロアルバム。

 1999年の音楽だけど、聴いてみたら今まさに自分が好きな雰囲気で驚いた。心地よく海辺に吹く風みたいなウィスパーボイス、ジャズとかボサノヴァの気配もありつつ親しみやすい楽器のリズム。暖かくなる気候に合いそう。



◯ Flower Face / Baby Teeth (2018)


 カナダ・オンタリオのアーティスト、Ruby McKinnonが放つドリーミーなベッドルームポップ。だけど、どこか妙に淡くて広々とした気配。明かりの消えた、石造りでひんやりした広い大聖堂に寝転がっているような不思議な感覚に陥る。音楽がふと消えてしまうと、聴こえていたことが夢だったみたいな、幻のような一枚。

 最新シングルも良かったので、新たなアルバムリリースも期待してしまう。



◯ A Beacon School / Cola (2019)


 Patrick J. Smithによる別名義、Lofiやドリーム・ポップの心地よさ満載の一枚。シルクみたいな、透明感のあるギターの重なる音色。スモーキーな浮遊感あるボーカル。体の輪郭が消えていくような感覚に陥る一枚。これ以降アルバムが出ていないようで、SNSでの情報更新も積極的ではないみたいだけれど、新たな活動があったら是非……。


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● 2021年総括


 いわゆるポスト・パンク系の音楽をたくさん聴いた印象があります。black midiやYard Act、ここには挙げませんでしたがBlack Country, New Roadなど、「全体的にはなんとなくかったるそうで、ジャキジャキした音のギター、独り言みたいなボーカル(notラップ)、バンドらしからぬ楽器(管楽器など)が鳴る感じ」が台頭したからでしょう。

 こういう音楽を、「やかましい」と思わずかっこいいなと思えたのは嬉しかったですね。2020年は、どちらかというと耳に優しいLofi系をたくさん聴いていたので、その反動だったのかもしれませんが。ロック育ちの血が騒ぎました。


 また、こちらも世間の流行かつ昔からなんでしょうけれど、様々な音楽から影響を受けているのがわかる、少し複雑な音楽も結構好きになれた年でした。ダブ・ステップやジャス、レゲエやR&Bを土台とした音楽のように、単独ではあまり聴かないジャンルでも、混ざり合うことで「好きだな」と思うようになることがとても多かったです。Little SimzやJungle、John GlacierやDamu The Fudgemunk辺りはその系統だと思います。


 とは言え、近年好きなひんやり・パリピすぎないエレクトロニカ(ClaptoneやKitoやTeen Daze)には今年もだいぶ心を助けてもらいましたし、ドリーム・ポップ/ベッドルーム・ポップ(JordanaやJulien Baker、Drug Store Romeos)も大好きなのは変わりません。

 更には、美メロな音楽(Puma BlueやBruno Major、Sam PrekopやFlower Face、Aly & AJ)についても新たな発見がたくさんあり、好きな音楽が本当に増えました。


 そして不思議なもので、昔聴いていたようなロックにも心を惹かれるようになって来ました。Royal Bloodの衝撃たるや凄まじいものがありました。以来、Goat GirlやInhalerも注目するようになったので、三つ子の魂百までとは言い得て妙だなぁと実感する次第です。


 2020年の終わりには、2021年の最後に自分がこの9枚を選ぶなんて想像もしていませんでした。それが今や、ここに書いた以外も含めてたくさんの好きな音楽を抱えてほくほくした気持ちで2021年を終えることが出来、とても嬉しいです。

 2022年はどんな音楽に出逢えるでしょう。楽しみで仕方がありません。そのために、来年も頑張って生きたいものです。

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