にほん下ネタむかしばなし  ~マラとりじいさん~

@dekai3

マラとりじいさん

 むかしむかし、ある秘所に、ポケットの中にとても大きなモンスターを忍ばせているおじいさんが住んでいました。

 おじいさんのモンスターはとても大きく太く、全長は平時に一尺、臨戦時には四尺にもなる、正に御立派なモンスター様です。


 おじいさんはそのモンスターの持ち主という事でみんなからモンスターマスターと呼ばれており、村ではこのモンスターを狩る事に挑む女性(稀に男性)をモンスターハンターと呼んでいました。

 おじいさんのモンスターのモンスターぶりは村だけには収まらず、隣の村どころか余所の国まで知れ渡っていて、何人ものモンスターハンターがおじいさんのモンスターに挑戦しています。

 中には砂漠の国の女王や、世界を股にかける女スパイや、百人斬りを達成した益荒男なんかもハンターとして村に訪れたと言われています。


 しかし、これだけ沢山のモンスターハンターが訪れても、おじいさんのモンスターを見るや否や『無理』の一言で帰ってしまうハンターばかりで、無謀にも戦いを挑んだハンターも『ん、む…無理ぃ…』と言って跨っただけで満足して諦めてしまい、おじいさんはこの歳になってもとてもピュアピュアで清らかな肉体のままなのです。

 おじいさんとしては直ぐにでも『新品未使用(※展示品なので汚れ痛み有り)』の札を剥がしたいのですが、相手が務まるハンターが全く居ないのでままなりません。

 仕方なく、おじいさんは今日も日課であるモンスター磨きで精を出します。


ゴシゴシ ゴシゴシ


「ふぅ…相変わらず大きい事じゃ……」

「頼もう!!」

「な、なんじゃ…うっ……」


 おじいさんが精を出していると、突然外から大きな声が聞こえてきて、おじいさんはその声にびっくりして予定外のタイミングでうっとしてしまいました。


「頼もう!!!」

「少し待っとれ!!!」


 おじいさんはうっとしてしまった原因の声に少し苛立ちながら返し、そそくさとちり紙でモンスターを拭いてから玄関へと向かいます。


「全く、皮物の春画で楽しんでいたというのに…」

「頼もう!!!」

「今出る!!」


ガラガラ ピシッ


「おお、お前さんがモンスターマスターか?」

「うおっ!? な、なんじゃ貴様!!???」


 おじいさんが戸を勢いよく開けた先に居たのは、なんと鬼でした。

 ピン とそそり立つ特徴的な突起物を構え、突起物の根元はじゃもじゃの毛で覆われ、体全体がバッキバキに怒張して赤黒くなっているという、あの鬼です。


「その膨らみと特徴的な臭いはお前がモンスターマスターで間違い無さそうだな。お頭が呼んでいるからちょっと来い」


ムンズッ


「な、なんじゃ、離せ! うわぁあ!!?」


 鬼はおじいさんを見るや否や、俵でも担ぐようにして肩に乗せて歩き出します。

 おじいさんは必死に抵抗を試みますが、おじいさんのモンスターの根元にある精製工場が上手い事鬼の脇に挟まれていて、迂闊に暴れると潰されてしまいそうなので弱弱しい抵抗しか出来ません。

 しかもおじいさんの家はモンスタハンターがいつやってきてもいい様にと村から離れた場所にあるので、どれだけ騒いでも村人が助けに来ることは無いのです。

 そうして、おじいさんは誰の目に留まる事無く、鬼の住処まで連れていかれました。


「お頭ー、例の爺さんを連れてきたぞー」


 そしておじいさんを連れてきた鬼は住処の奥へと声をかけます。

 おじいさんが恐る恐る辺りを見回してみると、どうやらここは山の中の洞窟の様でした。入り口にはいくつもの骨の山がありましたし、洞窟内も何やら生臭いような据えた臭いがしてとても不気味です。

 こんな所に連れてこられて、おじいさんは一体何をされてしまうのでしょうか。鬼のお頭は何の為におじいさんを連れて来る様に命令したのでしょうか。


「ようやく来たわね。モンスターマスター」


 暫くすると、奥から可愛い膨らみかけの二つの突起を尖らせ、お腹をぽっこりさせた鬼がやってきました。

 馬頭餓鬼メスガキです。


「あんた、とても凶悪なモンスターを飼っているそうじゃない」


 馬頭餓鬼メスガキはおじいさんを見るなりそう言いました。

 おじいさんは鬼の頭。つまり鬼頭きとう馬頭餓鬼メスガキだった事に驚いて言葉を失っています。

 鬼と言えば屈強な肉体の持ち主であり、力こそが正義だと言わんばかりの暴れん棒です。そんな鬼の頭が馬頭餓鬼メスガキだなんて。


「ちょっと! 聞いてるの!? 大人ならちゃんと返事しなさいよ!! 礼儀でしょ!!?」

「まあまあお頭。きっとお頭が余りにも恐ろしくて声が出ないんですよ」

「ふんっ、それもそうね。この私の恐ろしさは並大抵の恐ろしさじゃないんだから」


 おじいさんを連れてきた鬼が馬頭餓鬼メスガキを宥めると、馬頭餓鬼メスガキは当然という様子でその膨らみかけの突起を揺らしました。

 おじいさんはほっと一息付きます。馬頭餓鬼メスガキとはいえ鬼には違いありません。怒らせたら一体どんな事になるのやら。

 おじいさんはこれ以上黙っていては鬼を怒らせてしまうと考え、意を決して馬頭餓鬼メスガキへ話しかけます。


「た、確かに儂はモンスターマスターと呼ばれておるが、いったい鬼が儂になんの用なのじゃ…」


 おじいさんは自分がこんな所にまで連れて来られた理由を聞きます。

 わざわざ自分をモンスターマスターと分かりながら連れてきたという事はおじいさんのモンスターに関連する事なんでしょうが、生憎とおじいさんは異種属性は持っていないので鬼相手ではエレクトしません。ましてや先程精を出したばかりなのでモンスターは暫くは休眠状態です。

 おじいさんは馬頭餓鬼メスガキの目的次第では生命を覚悟するべきだなと考えました。


「この辺りのモンスターは全て私の配下なのよ。それなのにモンスターマスターを名乗る人間が居るなんて不快じゃない」

「???」


 おじいさんは馬頭餓鬼メスガキが言っている事に何やら違和感を覚えます。

 確かにおじいさんはモンスターマスターですが、おじいさんのモンスターはおじいさんのモンスターで、この辺りのモンスターとは関係ありません。


「だから、あんたをギッタギタにして、二度と人間がモンスターを支配しない様に人間にもモンスターにも知らしめるのよ!!」

「流石! お頭! モンスターの星!!」

「(そっちじゃったかぁ〜…)」


 どうやら鬼達はおじいさんがモンスターマスターと呼ばれているのはモンスターを支配して操るタイプのモンスターマスターだからと勘違いしている様です。

 確かにモンスターはモンスターですが、おじいさんのモンスターはモンスターではなくておじいさんのモンスターなのでモンスターではありません。

 おじいさんは体がピュアピュアですが、馬頭餓鬼メスガキ達は心がピュアピュアの様です。


「ほら、早くモンスターを出しなさい。ズボンの中に隠してるのは分かってるんだからね!」


 馬頭餓鬼メスガキはそう言い、おじいさんにモンスターを出せと迫ります。

 しかし、おじいさんはここでおじいさんのモンスターを曝け出してしまうのは絵面的にまずいばかりか、馬頭餓鬼メスガキの勘違いだとバレた時に恥隠しに何をされるか分かった物ではないと考え、モンスターを出し渋ります。


「こ、このモンスターは儂と一心同体なんじゃ。今更離すわけにはいかん」


 おじいさんは直接馬頭餓鬼メスガキに指摘はせず、遠回しにそれとなく勘違いに気付いて貰おうと必死に言葉を選んで話します。


「そういうのいいから。私が出せって言ったら出しなさいよ」

「そうだそうだ。お頭に逆らうんじゃない」


 ですが、馬頭餓鬼メスガキ達にはそれが伝わりません。


「儂とこいつを引き離したらお互いに死んでしまうかもしれん!」

「願ったりじゃない。モンスターを支配する人間も、人間に支配されたモンスターも、良い見せしめになるわ」


 同情をひこうとしましたが通用しません。


「今日は調子が悪い様なので日を改めてくれんか」

「わざわざ連れて来たのよ? 今やらないでどうするの」


 今日は止めて欲しいとお願いしても聞いてくれません。


「じ、実は儂自身がモンスターなんじゃ! モンスターとは儂自身の事なんじゃ!!」」

「は? 舐めないでくれる? 私達が人間を間違えるわけないじゃない」


 かなりギリギリの線を突きますが気付いて貰えません。

 それどころか馬頭餓鬼メスガキ達を怒らせてしまった様です。


「もういいわ。思い入れがあると思って自分から差し出すのを待ってあげていたけど、こんなにみっともなく言い訳するとは思わなかったわ。おい、お前!!」

「はい、お頭!」


ガシッ


「うぐぅぅ! 離せ! 離さんか!!」


 馬頭餓鬼メスガキがおじいさんを連れてきた鬼に顎で指示を出すと、鬼はおじいさんを羽交い絞めにします。


「お前も!」

「はいよ、お頭!」


 そして馬頭餓鬼メスガキは別の鬼にも指示を出し、その鬼と一緒にゆっくりとおじいさんに近寄ってきます。


「ほら、さっさと出てきなさい! このモンスターの面汚しが!! 人間なんかに支配されて恥ずかしくないのぉ~?」


ムンズ


「はうっ!!」


 馬頭餓鬼メスガキが声をかけると、 馬頭餓鬼メスガキの傍らに居た鬼がおじいさんのズボンの中に手を入れておじいさんのモンスターを掴みます。

 おじいさんは咄嗟に変な声を出しながら腰を後ろに引きましたが、後ろには怒張していて屈強な鬼が居るので下がる事は出来ません。


「お、こいつは大物ですぜお頭! 滅多にお目にかかれやしません!」

「う、ぐっ…」


 おじいさんのモンスターを掴んだ鬼はおじいさんのモンスターが大物な事に喜んで声を挙げます。

 おじいさんは余りの痛みに脂汗びっしりでカタカタと震えていますが、馬頭餓鬼メスガキ達はそんな事は気にしません。


「ま、待っとくれ…このモンスターはモンスターでは無くて…」

「そういうのもういいから、ほら、早くやっちゃいなさい」

「はいよ、お頭!」


 おじいさんは必死におじいさんのモンスターはモンスターですがモンスターでは無くておじいさんのモンスターだという事を説明しようとしますが、馬頭餓鬼メスガキ達はもう耳を傾けません。

 それどころかより一層手に力を込め、怒張させた体を更に黒光りさせます。


「無理、無理じゃ! 無理無理!! 無理ぃ!!!」


 おじいさんは今までのモンスタハンター達が言ったのと同じセリフを吐きますが、そんな事で止まる鬼ではありません。


「せー…のっ!!」


ググググググ……………スポーン!!!


 勢いよく鬼の手がおじいさんのズボンから引き出され、おじいさんのモンスターが引っこ抜かれました。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ…………………???」


 おじいさんは破滅的な痛みが来るだろう事を恐れて叫び声を挙げましたが、モンスターを引き千切られたにしては不思議と痛くありません。

 何も無かったのかと思いましたが、ちゃんと股間に喪失感はありますし、その上、何やらスッキリとした爽快感もあります。


「これが人間に支配されたモンスター。中々面白い感触ね」

「おお、これはこれは」


グニグニグニグニ


 おじいさんはおじいさんから引き千切られたおじいさんのモンスターを弄んでいる馬頭餓鬼メスガキ達を見て、ある事に気付きます。

 おじいさんのモンスターはぐったりとした状態で弄られているのですが、それとは別におじいさんの股間に小さなモンスターが残っているのです。

 という事は、馬頭餓鬼メスガキ達がぐにぐにとして弄んでいるおじいさんの元モンスターは一体なんなのでしょう。


「あれ? こいつ、寄生型のモンスターじゃない」

「って事は、こいつは人間に支配されている訳では無いんですかい?」

「そうね。逆にこいつが人間を操っていたまであるわ。全く、何たるモンスターの面汚しか」

「ど、どういう事じゃ? それじゃ儂のモンスターは…」


 馬頭餓鬼メスガキはおじいさんの元モンスターを一通り弄ぶと、今度は興味が無くなったと言わんばかりに床に投げ捨てました。


ペチン プルプル


「もうこいつの事はいいわ。人間も元の所に返してきなさい」

「はい、お頭!」


ムンズ


「ま、またか!? ええい、離せ! 説明をしろ!」


 おじいさんは又も鬼に担がれた事に抵抗し、おじいさんの元モンスターの事について馬頭餓鬼メスガキに尋ねます。

 しかし、馬頭餓鬼メスガキは既におじいさんと地面でぐんにょりしている元おじいさんのモンスターから興味を失ってしまっており、あくびをしながら洞窟の奥へと消えていきました。


 その後、家へ戻されたおじいさんは村人へ訳を話してモンスターマスターの称号を辞退したそうですが、それによりモンスタハンターから狙われなくなったので、死ぬまで新品未使用(※展示品なので汚れ痛み有り)』の札を剥がす事が出来なかったそうです。


 おしまい。

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