白虎竜④
竜は強い。倒すためには罠に嵌るか不意をつくか、いずれにしても汚い手で戦う事が基本だ。
頑健な装甲のため銃では致命傷に至らず、高い運動能力のために大砲では捉えきれない。
だが、反動が大きく余程の使い手で無ければ正確に急所を貫くことはできない弱さがあった。
竜を一撃で仕留めるには脳髄を正確に射抜くことが最も確実だ。しかし、頭部は躱されやすいうえに心臓と違い外れても他の箇所に損傷があるというわけでもない。普段なら取ることは無い手だ。
「3番槍です。探したのですが、他は全部湿気ってました」
「トンイ、お前は下がれ」
ゾグルは
コージョーは上手く立ち回っている。先程のゾグルと同じように死角に回り、際どいながら爪を掻い潜っていた。
おかげでゾグルは絶好位置を陣取る事が出来た。竜から見て左側背の位置で右手に大岩がある。地面も比較的細かい砂利で乾いているため、
ゾグルは不思議な感覚に陥っていた。
研ぎ澄まされた五感が一瞬で膨大な情報を取り込み、次の一瞬には必要な情報だけが残っていた。
コージョーがちらりと目配せをしたのが見えた。今なら言葉など無くとも何がしたいのかわかる。頷くと次の瞬間にはコージョーがこちらに向けて走り出した。
飛び跳ねるような一歩目、コージョーまでの距離を掴む。二歩目左前脚での横なぎ。これは当たらない。三歩目は右脚での大なぎ。だが、まだ届かない。───はずであった。
一瞬が永遠にさえ思える。コージョーが浮き石を踏み抜き、体勢が崩れていく。黒い影が迫る。このまま頭を撃ち抜いてもコージョーに爪が届くだろう。
───お前は何のために竜を狩るんだ。
右脚を射抜かれた竜の悲痛な鳴き声が山脈に響いた。
狩る者、生きる者 土屋シン @Kappa801
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