主人公の少女・ミアを巡り、ハルをはじめとする様々な人間模様が繰り広げられる一方で、巨大宗教組織や各国家がミアを獲得すべく暗躍する……。
主人公だけを描くのも物語の一つではあるし、それだけを望む人も一定数いるのは確か。
けれど、物語は様々な人間を描かねば進行出来ない部分も多い。
群像劇とはそういったものであり、典型的な例では田中芳樹氏の『銀河英雄伝説』や故・栗本薫氏の『グイン・サーガ』がそれに該当するだろう。
もう少し軽いのであれば、水野良氏の『ロードス島戦記』シリーズでもいいかも。
群像劇自体は人を選ぶし、主人公視点のみ(近年多い、一人称で語る展開)で描く物語もしかり。
この物語は群像劇でこそ、ミアとハルの関係を深める要素を描けるのではないか、と自分は考えている。
物語の先には何があるのか――それは作者のみぞ知る……。
想像の裏切りの連続です!
タイトルに惹かれて読み始めてみれば、儚く美しいキャラクターに圧倒されます。
「ぬりかべ令嬢ってそういうこと?!」――言葉の響きとのギャップがまた楽しい!
突然ブチ込まれるギャグパート。
別視点で判明する、外見からはわからないキャラクターたちの心情。
さらに読むのを躊躇するような壮絶な展開まで!
宗教、政治、組織、キャラクターたちの想いや立場が織りなす複雑な人間関係。
そして全ての物語が、ひとつの恋へと集約していく快感!
秀逸なタイトルに作者さまのセンスが光る、シロップ漬けの恋愛小説をどうぞ。
ただし、苦めのブラックコーヒーの用意をお忘れなく。
* * *
ところでいつになったらタイトル回収されるんでしょうか。
マリアンヌの行く末と共にずっとヤキモキしています。
まずはその題名で惹かれる事かと思います。
「ぬりかべ令嬢」とはなんぞや?と気になりますよね?
詳細は読んでご確認を!
キャラがそれぞれ立っており、まるでそこに存在するかのような彼女達。
序盤はこの野郎、お前退場しろよと思っていたキャラが話が進むにつれて愛らしくなってきます。
この辺りの手腕は惚れ惚れします。
ヒロインであるミアが健気で可愛いのはもちろんの事、赤ずきんちゃんをイメージさせる魔道具師のマリカたん。
どう考えても転移者か転生者だろうと思われるマリアンヌ。
他にも個性豊かなキャラ達がとても魅力です。
そして何気に後半になりますがミアぱぱもかなりやり手です。
こんなに計算できるならもっといろいろ出来たのでは?とツッコミもしたくなります。
そして一番の見どころは1章終盤、ハル×ミア(人によってはミア×ハル)とディルク×マリカ(人によってはマリカ×ディルク)の二組の恐らくバカップルの行く末とそれを掻き回すであろうマリアンヌの存在が2章以降の期待ですかね?
90年代の中学生を彷彿させる上記のバカップル達は、まさしく砂糖と練乳とMAXコーヒーを混ぜたら危険な程の甘々さがあります。
この物語最大の謎はいつ介護するの?ですけどね。