正体と疑念とお財布。

「……つまるところ、呪われた人を一緒に探そうとどうやって学校に忍び込もうか考えた末に思い付いたのが、生徒になってしまえば良いのではないか、と……?」


 校舎にもたれ掛かり項垂れていた顔を少しだけ上げ、車の上に座るクロアに視線を向ける。


「そう言うことだニャ」


「そう言うことだニャ、って……先に言ってくれよぉ〜……」


「先に言ったら"お楽しみ"にならないじゃにゃいか」


 クロアはプイッと顔を背けながらそんな事を言う。


「あ、先週言ってたお楽しみって、この事だったの?」


「そうニャそうニャ。どうだったニャ?」


「どうもこうもないっ!俺が恥をかいただけだったし」


「それはただ貴方あにゃたがアホなことをしたからだニャ。私は関係にゃいニャ」


「いやぁ、それもそうなんだけどさあ、はぁ……」


 あの時、衝動で動いてしまった自分に後悔する。


 すると、その時ふと疑念が頭に浮かんだ。


「……クロアさんや。少し質問宜しいかな」


「にゃんだニャ?」


「これは何処から調達したのですか……?」


 そう言いながら俺は先程俺が綺麗に畳んだ女子用学生服を指差した。


「あー、それなら大人おとにゃ達がいっぱいいた部屋に置いてあったから丁度いいと思って拝借したニャ!」


「拝借したニャ!じゃないよ!!いや、多分そこ職員室だから!!制服勝手に持っていったら行けないから!!!」


 クロアの言葉に思わず立ち上がってしまう。


「はにゃ?何故にゃぜダメにゃのニャ?」


 クロアはこてんっ、と首を傾げて純粋な瞳で俺を見た。いやいや、超絶神的に可愛いなその仕草。


「いや、学校の備品だから……って言っても分からないか……。ただし!」


 俺が聞きたいことのもう一つ。


「もう一つの質問、これが重要、最重要案件だ」


「にゃんだニャ?」


「どうやってこの学校に編入したのかな?」


 俺はクロアの目をしっかりと捉えて言った。


「そりゃあ」


「そりゃあ?」


「洗脳魔法でちょちょいのちょいだニャ!」


 クロアは最上級のドヤ顔でそう言った。言ってしまった。

 

「は?……クロアさん?魔法がなんだって……?」


「だから、私の洗脳魔法でちょちょいのちょいだニャ!」


「学校の先生を?」


「うみゃ!」


「洗脳?」


「うにゃ!」


 クロアの返答の一言一言かわいいかわよすぎる。ただし、洗脳って洗脳って……まぁかわいいし、いいか、いいよなうんうん……


「いや……ダメに決まってんだろおぉぉおおおおおおお!!!!」


「はにゃ?!にゃんでニャ?!何故にゃぜダメにゃのニャ!?」


「いや、ダメでしょ!反則でしょ!裏口入学どころじゃ無いじゃん!!真正面から強行突破したね!君!」


「いや、だってニャ。じむしつ?って書いてあるところで「この学校に入りたいんですけどどうしたら良いんですか?」って聞いたら……猫が喋ったって大騒ぎににゃったから、もう面倒くさいっ!って思って魔法を使ったニャ!」


「使ったニャ!じゃあないよ……。全受験生にごめんなさいしろぉ!はぁ……」


 もう叫び疲れたよぉ、この超絶神的にかわいいけど、馬鹿だ……。


「まぁいいや、入学してしまったのはこの際仕方がない……いや、仕方がなく無いんだけどさ……。制服だけでも返しに行こう、そして新しい制服を買いに行こう……」


「分かったニャ!」


 これからはお財布事情が波乱になりそうだ……。


「そ、れ、か、ら!無闇に魔法は使わないこと!洗脳魔法とかもってのほかだよ!」


「分かったニャ!」


 この本当に分かってるんだろうか……。







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猫と呪いと高校生。 @Asyosetu

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