side-i
死んだ時をよく覚えてる。
でもそれ以上に私がようちゃんのお嫁さんになりたかったことをよく覚えていた。
「起きてください」
また、私は生きることを許されてんだって思ってすぐに飛び起きた。
「ここはどこですか?」
「天国です」
ああ、私はようちゃんの約束を守れなかった。って死んじゃった悲しみより嫌われるんじゃないかって方に心配してしまった。
「あなたは死んだんです。」
私にようやく冷静さが取り戻されたので、声を発している人の顔をよく見る。背の高い男の人だった。天国っていうものだから赤ちゃんに翼が生えているきれいな天使様がいらっしゃるものだと思っていた。
どちらにせよ、ようちゃんはいない。
2年が経過した。
私が思っていた通り、天国から生きている人たちの動きを見ることができる。
ようちゃんはあれからすっかり元気がなくなって、小麦色の肌は段々白に染められていった。皆ともしゃべらなくなり、学校へ行かない日も続く。
私がようちゃんの元気を吸い取って天国へ来てしまったんだと理解した。
天国での私の扱いはとても手厚いものだった。
皆優しくて、皆暖かくて
生きている人たちのように年を気にすることなく、自分の望む年齢でいられる。
私はようちゃんの年齢でいたい。
たとえようちゃんが私に気付かなくなったとしても、同じ年齢のまま老けていきたい。
私はそう考えて、だんだんようちゃんに会いたいと思うようになっていった。
出来ないことができる世界、ありえないことがありえる世界。もしかして、会えない世界は実は会えるものだったりする。っていう決まりがあるんじゃないかって。
天国での私の待遇は手厚い。それは強く感じられていたことだったが
「私と結婚してください」
私を一番に助けた男の人だった。
その人は私の事を下界にいる時から好きだったという。ずっとみていたと
「結婚してくれるのなら、なんだって願いを叶えます」
彼はそういってくれた。彼は天国で一番偉い人だったから。
―――――――日に日に彼は弱っていく。
何でも叶えてくれるのなら、私は彼のお嫁さんに
―――――――私が彼の元気をすべて吸い取ったんだ。
私は、本当に彼のお嫁さんになりたかった。
それだけはたった一つの私の中の事実だった。
だけれども
「願いを叶えてくれるのなら、下界にいる男の子に最愛の女性が見つかるように手配して」
それが、たとえ私じゃなくても
私は彼じゃない別の人と結婚する。そしてあなたは幸せになって。
私があなたを、あなたが私にとらわれないように。
透明(短編) 黒木悠里 @yuri-17
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