第5話 就寝前
リツの部屋から見える外はもう暗く、とても静かだった。
パソコンで恋愛ゲームを進めるマウスのクリック音だけがリツの部屋に響いていた。
「もう十一時か」
リツは手を止め、顔を上げて現在時刻を壁掛け時計で確かめる。
「寝るにはおしい、微妙な時間」
明日のエーテルエール魔術院での授業は一限から、魔力解析学の魔力の数値化の手法をテーマにしたディスカッションが予定させている。
しかしプレイしてるゲームは盛り上がりを見せている。
主人公がヒロインの過去を知りお互いに距離を置く、それでもイベントを通じて気持ちを確かめ合うように言葉を交わして二人の距離がまた近づいていく。
衝動買いして休日二日潰した恋愛ゲームのエンディングが近いとリツは確信していた。
「もう一時間」
辞め時ではないと判断。
ここまで夢中になったテンションのままクリアすることに意味がある。そのエクスタシーを得るために明日の一限を考慮してギリギリまで粘ることがリツの考えだった。
リツは画面に視線を戻してゲームを再開する。
「二人の幸せを見届ける!」
その後、日が昇るまでプレイした先がバットエンドで発狂し、眠れず迎えた一限のディスカッションが散々な結果になったことは、また別の話。
楽に魔術は学べない? エーテルエール魔術院の魔々ある日常 錦 @taketachi
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