始まり
大股で道をゆく若い男が公園の傍で足を止めた。
そこに彼女はいた。葉桜を眺める彼女は男と同じ高校生くらいだろうか。
ガムをくちゃくちゃと噛みながら男は公園に足を踏み入れた。
彼女は男を見て笑った。
男は少々面食らってからへらへらと笑いながら彼女に声を掛けて、それから名を訪ねた。
彼女の返答に男の動作が鈍った。まるで噛んでいるガムがほんの一瞬キャラメルにでも変わったかのような僅かな遅滞。
男は違和感を気に留めなかった。こんなこと偶然に過ぎない。そう考えたのだ。
彼女が告げた名はちょうど最近彼のことを振った女のものに似通っていた。
くすくすと嗤ってから彼女は舌なめずりした。
名前には魔性が宿る。
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