平和な島
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平和な島
そこは小さな島だった。
四方を潮の流れが速い海で囲まれた、いわゆる「絶海の孤島」と言うところであったが、その島には緑が生い茂り、日差しも柔らかくてまさに「常春」とでも言えそうな穏やかな島であった。そしてその島には一本の橋が架かっており、唯一その橋で外との接触が可能となっていた。
「こんにちはー! お久しぶりです~配達に来ましたよ!」
今日は久方ぶりに橋を渡って「外」からの必要物資搬入と、こちらから「外」への物資輸送を行ってくれる「配達人」が来る日。配達人の到着を今か今かと待ちわびていた島民が一斉に集まってきて橋のたもとは大賑わいとなった。
「ねぇねぇ! 今回は何が欲しいの? 疫病? それとも戦争?」
「んー今回はそこまではいらないかな?経済不況くらいで良いよ」
「えー? そんなのでいいの?」
一寸不満そうな顔をする島民達に配達人は苦笑いしながら答えた。
「うん。前回向こうに配達した『天災』が思ったより効果が高くてね。ほら、だからこっちに来ることになった人も多かっただろ?」
あー、確かに一時期ここの人口が増えたね。と、島民は口々に言う。
「まあ、経済不況だけでもかなりの効果があるだろうからね。ほら、なんだっけ?なんとか級ショック? あれくらいのを一つ頼むよ。それだけでもこっちに来る人間は結構いると思うからね」
わかったー! それじゃ出来上がったらここに持ってくるねー! と、言って島民はそれぞれの仕事場に戻って作業を始めた。
まさか「魔界」と呼ばれるところがこんなのんびりとした風光明媚な場所だとはこの橋の向こうにいるもの――いわゆる私達「人間」――は思わないだろうな。一休みしながら配達人である「悪魔」は先程自分が渡ってきた橋を見ながらふとそんなことを考えていた。
おわり。
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